探偵たちのメリーじゃないクリスマス 2

 きらきらとツリーを彩る電飾が輝く。店のラジオからは定番のクリスマス・ソングが流れている。

 ――そういった訳で、グリフィンは街中でチョコレートを配っていた。


 グリフィンの姿は普段の仮面に紺白のコート。その上にちょこんと赤いサンタ帽を乗せているだけだ。それでもサンタクロースのシンボル力というのは絶大で、グリフィンの姿を見た子供たちは「あっサンタクロースだ!」と無邪気に駆け寄った。


「うおーっ! かっけえ! あのサンタ超かっけえ!」

「サンタクロースさん、何してるの?」

「チョコレート頂戴!」

「お母さん、サンタクロースさんからチョコレート貰った!」

「一枚だけ? えー! もっと欲しい!」


 菓子会社の社員が言った通り、子供たちは仮面姿のサンタクロースを喜んだ。遠巻きに見る親たちの手を引っ張り、または振り切って仮面のサンタクロースの元へとプレゼントをねだった。白い袋に詰められた板チョコレートはみるみる小さな手に渡っていった。


「サンタさんさ、何でそんな格好してんの? 普通と違うよな」

「うむ……最近の流行に合わせてな。いつまでも赤い服にヒゲでは、君たちのような若者への訴求力が低かろうと思ったのだ」

「そのお面とってよ!」

「それは叶わん。この仮面は新たな衣装。旧来の白ヒゲや赤い服と同等の価値を持つ。仮面もまた私がサンタクロースである証だ。故に、外すことは出来ない」


 即席ででっち上げた設定を子供たちは楽しんだ。下層ダスト・イーストは楽に生きられる街ではない。けれど今ここにはきらめきがあり、夢があり、希望があった。


 一時間ほどチョコレートを配ると親子連れの姿も少なくなった。袋の中にはまだチョコレートの重みがあり、グリフィンは手持ち無沙汰に過ぎ去る人々を眺めていた。


「おや、おやおや。シャノンのお友達じゃないか」


 聞き覚えのある声がした。グリフィンは声の方を振り返った。


「どうしたんだいそんな場所で、そんな格好で。儲からない家主のために健気にも稼いでるのかい?」

「――ウル・コネリーか」


 黒髪秀麗、派手なスカーフを巻いた男はニタリと厭らしく笑った。


「そうとも、このオレさ。サンタクロースのグリフィン?」

「お前こそ、こんな場所を出歩く奴だったとはな。地下蔵の似合う男だと思っていたが」

「ヒヒヒ、オレだって出歩くことはあるさ。何せ今日は客が来ないのが解ってる。アポイントメントがあるやつも、ないやつも。つまり今日のオレは自由ってことだ」

「……? 突然の客が来るかどうかも解るのか?」

「この街においてなら、どんな未来も過去も見通せる。それがオレというものさ」



 陽の下であってもコネリーは変わらず思わせ振りだった。


「取り巻きの二人は連れていないのだな」

「ヒヒ、オレたちそんなに一緒に居るって訳じゃあないぜ? 客を呼ぶ時は揃うこともあるがね。相手をビビらすには丁度良い。今頃あの二人は他の仕事をしているよ。アンタと同じくせっせとね」

「私のこの仕事は偶発的なものだ。通りがかった時、偶然声をかけられた。払いが良く、短時間労働だったゆえ請け負った」

「それで、せっせとチョコレート配りかい? オレにも一枚くれないかい」

「断る。子供に配れと言われている。お前は子供には見えんな」

「ヒッヒッヒ! そうかい、子供っぽいと言われることもあるんだがね、それじゃあ駄目か」

「駄目だろう」


 グリフィンが答えると、コネリーは愉快げに笑った。


「そりゃそうだな! まあ良い、面白いものを見せてもらった。だがね、気をつけるんだぜグリフィン?」

「何がだ」

「甘いチョコレートに引き寄せられるのは子供だけじゃあないからさ」


 ニヤリと口元を歪ませ、派手なスカーフを揺らしながらコネリーはその場を後にする。

 グリフィンが残された言葉の意味に首を傾げていた時、懐の秘術通話機<フィア・フォン>が緑色に明滅した。グリフィンは通話機を耳に当てた。


「もしもし――」

『あ、グリフィン? 中々帰ってこないから……今どこ?』


 それはシャノの声だった。


「すまない、色々事情があって日雇いの仕事をしている」

『アルバイト? 珍しいね、何の仕事?』

「うむ。サンタに扮してチョコレートを配っている。試供品だそうだ」

『時期柄だねー。でも突然何でそんなことに?』

「人手不足だそうだ。ああ。金払いが良くてな。何、あとニ時間ほどあれば捌ける。終われば予定通りゴミ箱を買い、戻ろう」

『払いが良い? ……あー……それって……』

「シャノ? ――む……?」


 グリフィンは言葉を途切れさせた。電話を片手に持つグリフィンの背で――コート越しに冷たく固い銃の感触がした。ちらりと横を向けば、そこには人影があった。子供の姿ではない。三人のガラの悪い男たちがいつの間にか逃げ道を塞ぐようにグリフィンを囲いこんでいた。


「おい、サンタクロース。サンタクロースってのは、プレゼントをくれるんだろ?」


 その内の一人、髪を緑色に染めたリーダー格の男がニヤリと笑った。


「その袋ごと、俺たちに渡して貰おうか」


 ◆ ◆ ◆


「んー……? 切れちゃったな」


 音声の途切れた秘術通話機<フィア・フォン>を見つめ、シャノは困ったように呟いた。どうしたものか、と考えながらインスタントコーヒーの入ったカップに湯沸器を傾けようとする。その拍子に不愉快なものが重く、額に当たった。シャノは顔を顰めた。


「ちょっとジャック、せめてこのぶら下がってる人体だけどうにかならない……? 腕のオブジェが頭に当たるんだけど」

「ならねえな」


 コーヒーを口にするジャックの返答はつれない。


「で、あいつは?」

「アルバイト中、だって」

「ハア?」

「日雇いの求人に捕まったみたい。グリフィンは人が良いからなぁ」

「何だ? その仕事、問題でもあるのか」

「うーん、どうも怪しいというか。いくら急いで人手が欲しくても、ここら辺で高額のバイトっていうのはあんまり……」

「あー、そういう」


 ジャックは合点がいった顔をした。


「で、どうすんだ? あいつのトコに行くのか?」

「そうだね。大丈夫かも知れないけど、念のためその方が……」


 シャノが思案した時だった。それは起こった。

 乱暴な音が鳴り響き、突如古びたアパルトメントの立て付けの悪いドアが開かれたのだ。

 ぽかんとしてシャノとジャックはそちらを見た。そこには謎めいた黒いローブ服を着た男が居た。男は叫んだ。


「我らが秘宝、返して貰おう! 秘密を知った貴様らは死ねッ!! 外より来たる神に栄えあれ!!」

「うわっ! 何だ!?」


 珍紛漢紛な言葉を叫ぶ謎のローブ男に、シャノは思わず手にした熱湯をかけた。哀れにも、100度に茹だった湯は玄関から乱入した男に直撃した。


「ギャアッ! なっ何だ!? 熱ッ! 熱い!?」


 熱湯を浴び、パニックになるローブ男をジャックが静かに殴り倒した。男は床に倒れ伏した。


「何だ、こいつ。またお前の厄介な友達か?」

「違うよ、全然知らない顔。あとコネリーは友達じゃないよ」


 シャノは空になった湯沸器を置き、悔しげに二人を見上げる男を観察した。時代遅れな黒いローブは古めかしいように見えて真新しい仕立てのものだ。


「ええと……悪魔崇拝者デモニストの人か何か? だとしたら、場所を間違えてると思うけど……うちは教会でも対立派閥の隠れ家でもなくて、ただの探偵事務所だよ。……今はそうは見えないかも知れないけど」


 部屋にはまだジャックが見せしめいやがらせとして飾り付けたカボチャや、蝋燭や、人体オブジェなどがぶら下がっていた。初めてこの部屋を訪れた者は誰も探偵事務所だとは思うまい。寧ろ悪魔崇拝者の集会真っ最中と言われた方が納得するだろう。


「いいや! 貴様らだ! 貴様らが卑劣にも盗み出したのだ! 我らが聖体と秘宝を!」


 ローブ男は興奮した様子で叫んだ。男の目はじっと一箇所を睨みつけており、シャノはその視線を追った。――その先には、暗黒祭壇と化した部屋の天井にぶらさげられた、腕や脚、頭などの不気味な人体オブジェ群。

 あまり見ないようにしていたため気が付かなかったが、よく見ればその中の腕の一本にだけ、違った箇所があった。赤く輝く宝石の指輪が。


 嫌な予感と共に、シャノはジャックを見た。


「……ジャック。これどこから持って来たの」

「あー、大体は俺が作ったヤツだよ。ただ一本だけ手本にしたヤツがあってな。それは材料になりそうなモン探してる時に外で拾ってきた」


 シャノは赤い指輪を嵌めた腕を指差した。


「……ジャック。ジャック。これ、造り物じゃないよね? 本物の木乃伊だよね?」

「言われてみれば。マジモンだな、これ」


 ジャックはぶら下がった腕をじっと見て目を丸くした。


「いやー随分精巧な造り物だと思ってたが、本物ならそりゃそうだな! ハハハ!」

「ハハハじゃないよ! 何てもの持ち込んでるんだよ!」

「いやいや。仕方ねえだろ。幾ら下層ダスト・イーストとは言え、そう簡単に本物の死体が落ちてるとは思わねえよ」

「死体などと言うな! 聖体だ!!」


 ローブ男は主張したが、逆にそれが盗難の原因になるとは不幸なことだった。


「とにかく、聖体と秘宝を返せ! 元より我らのものだ!」

「どうするよ、シャノ」

「うーん、所有権を尊重してあげたい所なんだけど……」

「何か問題あるか? 悪魔崇拝者デモニストったって結局はごっこ遊びだろ? 儀式くらいさせてやりゃ良いじゃねえか、何も起こりゃしねえんだし」

「本気でやってる人の前で失礼なこと言わないの。とはいえ、何もないとは思うんだけどね……」


 紋様めいた装飾に縁取られた赤い宝石が何か――シャノは気がかりだった。じっとそれを見ると僅かに、灰色の目が赤く疼いた気がした。


「いつものカンか?」

「カンだねえ」

「じゃ、仕方ねえな」


 ジャックは呟くと、ローブ男の腹部を殴り気絶させた。男はくぐもった声をあげると力なく倒れた。手近にあった荷造り紐でジャックは男を厳重に縛り上げた。


「お前のカンは当たるらしいからな。だがこの怪しげな聖体とやら、処分のアテはあんのか? これからグリフィンの所にも行くんだろ」

「そうなんだよねえ」


 シャノは思案し、それから赤い指輪を嵌めた木乃伊の腕を掴んだ。


「仕方ない、コレも持って行こう!」


 ◆ ◆ ◆


 一方その頃、フラットダウンの路地裏では不穏な空気が漂っていた。人通りの多い表通りとは違い、薄暗い路地にいるのは四人の男たちだけだ。二人の若い下っ端たちが一人の仮面の男を囲んでいる。


「……くれてやりたいのは山々だが、このチョコレートは委託された仕事でな……子供のみに配るよう言われている。今日は随分と寒い。栄養を摂取したくなるのは理解するが」


 グリフィンの言葉に下っ端たちは顔を見合わせ、呆れた表情を向けた。


「ハ、呑気な奴だなァ。状況解ってねえのか? ……よく見りゃ良い服来てやがる。ケッ、気に食わねえな」

「良いじゃねえすか、とっとと奪っちまいましょうよ」

「まったく、お前は小心者だな。ナメられてムカつかねえのか?」

「効率的と言って下さいよ」


 部下と見られる方が冷静に言った。緑髪のリーダー格の男は苛立たしげだった。


「俺たちは確かに小物だよ。赤い荷馬車カッロ・ロッソの後ろ盾がなきゃ、運び屋一つ出来やしない。でも俺たちは立派にやってる。赤い荷馬車カッロ・ロッソに甘えたりなんてしねえ、自分の仕事はキッチリ自分たちでケリをつけてる。そこにさァ、誇りってのがあるじゃねえか」

「そうですねえ」

「ケ、あいつら。今回の取引相手の奴ら、どいつも陰気な顔しやがって。赤い荷馬車カッロ・ロッソの奴ら、面倒臭がって俺たちに運びの仕事をぶん投げやがった。お前も気に食わねえだろ? クソ女のリンディは死体漁りの犬ブラックドッグで重宝されてるって話なのによ」

「良いじゃないですか、カネが入って、成果も上がる。オレはクリスマスにチキンが食えたらそれで十分ですよ。タリさんも食べたいでしょ? チキン」

「お前な、せめてガチョウの丸焼きくらい言ってみろよな」


 タリと呼ばれた緑髪の男は気が抜けたように溜息を吐き、それからグリフィンを睨んだ。


「妙な仮面つけやがって。余裕ぶってられるのも終わりだぜ――お育ちの良さそうなテメエでも、これが何かくらい解るよな?」


 グリフィンへと黒い銃口が向けられた。


「良いか、これ最後だぜ――死にたくなきゃ、その袋を俺たちに渡せ」


 グリフィンは――動揺しなかった。ただ一言、紡ぐべき言葉を紡いだ。


「――瞬け其の輝きよ《<サクリ・セ・コウ>》」


 瞬間、緑色の光がリーダー格の男へと弾けた。男は無様に吹き飛び、壁へ叩きつけられる!


「タリさん!」

「ぐ……! 何だテメエ……まさか、魔術……!? こいつ、と同じ悪魔崇拝者デモニストか……!?」

「特に信奉する神はいない。だが信仰心のない私から見ても、貴様らの行いは褒められたものではないな」


 グリフィンの手には小型の機械に収められたフィア片石が握られている。今度はグリフィンのほうが詰め寄る番だった。


「こちらからも言わせてもらおう。――死にたくなければ、退け」


 フィア片石が淡く緑色に輝いた。二人の男が息を呑んだ時――空から現れる者があった。


「――グリフィン!」


 彼の名を呼ぶ声がした。上を向けば、建物の間の空から舞い降りる赤色が見えた。


「よっとォ!」

「なん、ぐあっ!」


 長髪赤毛の男は鮮やかに下っ端二人を蹴り倒した。ふわりと目立つ赤色が宙を翻り、地面に降りた。


「グリフィン、無事!?」


 その後に灰色の目をした若者が続いた。二人の姿を目に留め、グリフィンは安堵したようにフィア片石をポケットにしまった。


「シャノン、ジャック。すまん、助かった。天の使いのようだったぞ」

「あはは、ジャックが上からの方が早いって言ってさ。こいつらは――」

「うむ。チョコレート強盗だ」

「……。チョコレート強盗?」


 グリフィンの口から出た言葉に、シャノは首を傾げた。


「そうだ。サンタクロースに扮して試供品を配っていた所、彼らに絡まれてな……まさか良い大人がチョコレートを奪いに来るとは。……そういえば、君たちは何故ここに?」


 突然現れた二人をじっと見るグリフィンに、シャノはどう答えたものかと悩んだ。


「……あのね、グリフィン。言いづらいんだけど、それは……全員ひっくるめて、グルかと」

「……グル?」


 グリフィンは怪訝に聞き返した。


「そう。チョコレート配りの依頼をした人もそこの人たちも、同じだよ。最初からその袋は奪わせるために渡されたんだよ。きっと、チョコレート以外の何かを取引するためにね」


 麻薬。盗難品。違法武器。様々なものが下層ダスト・イーストの闇では取引される。個人から組織へ、組織から組織へ、または組織から個人へ、数多の流通がある。


 その流通手段の一つに、当事者同士が直接ではなく、間に仲介人を用意することがある。プロの仲介人だけではない。何も知らない一般人を利用することも含まれる。何も知らない人間なら不審さがなく、警察の目を誤魔化しやすいからだ。仮に検挙されたとしても無辜の人間を身代わりにし、自分たちは煙のように痕跡を消すことも出来る。


「……つまり、私は運び屋に仕立て上げられたと」

「そういうことだね」

「つまりお前、金に釣られて下らないトラブルに巻き込まれたってことだ。馬鹿じゃねーの」


 ジャックの呆れた声にグリフィンはぐっと耐えた。


「それでは……このチョコレートを配り終えても賃金の支払いはないのか」

「多分」

「……そうか。残念だ」


 落ち込んだようにグリフィンは俯いた。シャノはグリフィンの持つ赤いプレゼント袋を指した。


「その袋の底、チョコレート以外にも何か入ってると思うよ」

「ふむ……どれ」


 グリフィンが袋を開け、中を漁った。配り終えていないチョコレートの入った袋の奥底に一つ、形の違うものがあった。


「これは……」


 グリフィンが取り出したそれは……とてもチョコレートには見えないものだった。


「……死体だな」

「乾いた死体だ」

「左手首だな」


 それは左手首の木乃伊だった。その指には、橙色の大粒の宝石。


「それって――……」

「オイオイ、面倒な縁が巡って来たな」


 シャノとジャックは、それに見覚えがあった。正しくはそっくり似たモノに。

 その時だった。橙色の宝石が怪しく光を発し始めたのだ。まるで何かに呼応するように。


「何に反応している……?」

「待って、心当たりが!」


 シャノは背負っていた鞄を開けた。中には部屋にぶら下げられていた赤い宝石の木乃伊。

 二つの聖体の宝石は呼応し合うように瞬き――そして静かに光を消した。


「これは……一体?」

「コレ、ジャックが吊るしてた人体オブジェの中にあったものでね……詳しいことは後で説明するけど、何かの儀式に使うものらしい。何かの宗教儀式だとか、涜神的行為だとか、パフォーマンスだとか、この街じゃありがちだ。普通なら気にしなかったんだけど、どうにもこの赤い宝石が気がかりでね」

「フム……赤い宝石と橙の宝石……この二つは確かに呼応しあった。少なくとも、ただの儀式ごっこの品ではない。正しく神秘的な品だ」

「この街に――本物の神秘品が?」


 三人は顔を見合わせた。上層のきらびやかさには程遠いとは言え、ここは機科学栄えし大都市、テムシティだ。確かに、世に神秘はある。不可思議はある。彼らは既にそれに触れている。けれどそれらは影に隠れ、闇に潜み、表立って現れるものではない。

 その時、しんとした空気を阻むように画一的な機械音がした。何かが振動する音だった。それはグリフィンのコートのポケットから響いていた。


「ム……? 携帯電話セルフォン……?」

秘術通話機<フィア・フォン>じゃなくて、普通の携帯電話セルフォン? グリフィン、そっちも持ってたの?」

「いや、心当たりがない」


 取り出した真新しい携帯電話セルフォンをグリフィンは怪訝に見た。


「どうするべきか」

「取ってみろよ。怪しいものはまず叩いてみろってな」

「聞いたこともない独自理論だな」


 グリフィンが携帯電話セルフォンの通話釦を押した。受声機スピーカーが僅かに音を立てた後、相手の声が聞こえた。


『もーしもーし? おや、その様子じゃ無事みたいだ。何よりだよ、シャノンのお友達?』


それは、下層ダスト・イーストの情報屋、酒場ブラックドッグの主、先程立ち去ったウル・コネリーだった。

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