1566階は図書館の世階

1566階は、世階そのものが巨大な図書館だ。

その蔵書数は膨大で、階層世界全体のあらゆる知識を網羅しているという。


四方の壁は無数の本棚になっており、書物によって、埋め尽くされている。天井は吹き抜けになっているが、無限に続くのではないかと思われる程高く、そこを目指して螺旋階段が連なっている。


私は、本棚の一つに近づくと、「運命の書」と書かれた一冊の本を手に取った。

この書物は、読む者に応じて内容を変え、その者の人生を記述するという。そして、書かれた事実は絶対的で、変えることはできないという。


この本には、無数の世階を旅する、私の行く末も記録されているのだろうか。

ならば、私がこれから訪れることになる階のことも、これを読めば分かるに違いない。


そんなことを考え、私はページを開くことなく、「運命の書」を、そっと本棚に戻した。


未来を知ったところで、それを変える術がないのなら、何が起こるか分からない旅の方が面白い。「運命の書」は、私には必要ないのだ。


これから旅する未知なる世階のことに思いを馳せながら、私は、次の階へ繋がる【箱船エレベーター】へと向かった。


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