１０５４階では、正義のヒーローたちに大勝利した悪の組織による統治が実現した。そして、悪いことを思う存分できる社会の実現を掲げ、国家運営が始まった。

窃盗、詐欺、器物損壊、殺人……。

悪事が推奨される悪人たちの理想郷が誕生したのだ。刑務所からは凶悪犯たちが解き放たれ、街には暴徒が溢れる。悪人たちは、欲望の赴くままに、暴虐の限りを尽くすこととなった。

都市が完膚無きまでに破壊され、道が善良な者たちの死体で埋まる頃。悪人たちは、こんな会話をしていた。

「はあ……そろそろ盗みや殺しも飽きてきたなあ」

「そうだ！こんな素晴らしい世の中を実現してくれた、悪の組織をぶっ潰そうぜ、良いことした奴らを皆殺しにするなんて、最高の悪事じゃないか！」

悪人たちは、武器を手に取ると、悪の組織の根城である国家の中枢機関に向けて、動き始める。

悪の理想郷は、儚く脆い。

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