1894階は城壁の世階

1894階の住人たちは、巨人族が1000年に一度、人間の国へ大攻勢をかけると信じている。それゆえ、彼らは、巨人の侵攻を防ぐべく、高い防壁を築いた。巨大な城壁は、何百年という月日を費やし、北東から南西に向けて、連なるまでになった。おかげで、巨人の姿は目撃されることがなくなったのだが、まだ不十分と思うのだろうか、未だに工事は続けられている。


箱船エレベーターのある丘の上の砦からは、この世階の住人たちが、多大な労力を注ぎ込んだ成果が確認できた。城壁は彼らの誇りであり、これを作り上げることこそが、生きる意味であると豪語する者さえいた。


箱船エレベーターの扉が開く。私はこれから、次の階に向かう。もう二度と、この地を訪れることは、ないだろう。


巨人族は既に絶滅している。私は、その事実を知っていたが、結局彼らに伝えることはできなかった。

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