108階は流刑地の世階
108階は、流刑地の階である。生前重い罪を犯した者が、女神の手によって、ここに転生させられ、罰を受けることになる。非力な少女の身体に生まれ変わり、厳しい刑務官の元、ひたすら重労働をさせられるのだ。
罪人である1人の娘が、重いシャベルを手に、ひたすら穴を掘らされていた。彼女を担当する刑務官の男は、彼女が1つ穴を掘り終えると、さっさと次の穴を掘れと、命じる。
だが、ここの土は、かなり硬く、掘り進めるのは、容易でない。穴を掘り続ける彼女の手は、石のように硬くなり、感覚も麻痺していた。それでも、辛い作業に手を止めれば、刑務官に木製の棒で、責め立てられることになる。
彼女が掘った穴の数は、1000を超え、辺りは巨大な穴だらけになっていた。
少女が、ある一つの穴を掘り終えた時、刑務官が微笑みながら、声をかけた。
「良くやった。これで、お前が生前犯した罪と同じ数の穴が、完成した。約束通り、お前は解放され、自由の身だ。今、ハシゴを持って来てやるからな。その穴の底で休憩しているといい」
「女神様……これで、私も前世の罪から、解放されるのですね……」
ここに来て以来、彼女は身に覚えの無い前世の罪のために、酷い目にあってきた。
だが、しばらくして、戻ってきた男が手にしていたのは、ハシゴではなく、ショベルだった。そして、それを使い、少女が掘り返した土を、容赦無く、彼女の上に被せていく。
「ちょっと待ってください。どうして、私を埋めようとするのですか?私は、許されるのではないですか?」
「何を言っているのだ。お前は、これから死という救いによって、犯した罪と今受けている罰から、解放されるのだ。それに、お前は前世で、恋人を生き埋めにして殺した。今度は、お前が土の中で苦しみながら死ぬのが、当然というものだ」
その言葉を聞いた途端、少女の心に前世の記憶が、蘇ってきた。
罪の意識と絶望に、頭を抑え屈み込む少女をよそに、刑務官は淡々と穴を埋めていく。
「じゃあな。来世では、悪事を働かず、幸せに生きるのだぞ」
少女を埋め終えた刑務官の男は、そう吐き捨ると、次なる裁きの準備に取り掛かるために、罪人を送り届ける【
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