あの日

冷夏に会ったとき、僕はこんな風に思った。

これも運命なんじゃないかと。

僕は部屋の中で冷夏の下着姿を思い浮かべていた。

あの時、スカートを脱いだ冷夏のことを僕はただ眺めていたのだ。

いったい彼女にどんな理由があってこんなことをするはめになったのだろう。

僕はその日、布団の中で彼女のことを思い浮かべながら眠りについた。


「おはよう」

「おはよー」


朝学校に行くと他の生徒たちがそんな風に話すのを聞いた。

もちろん僕に話しかけてくるやつは誰もいなかった。

僕はただぼんやりと机の上に座っていた。


「昨日の宿題やってきた?」

「やってねーよ。お前は?」

「やってない」

「誰かに見せてもらおうぜ」


僕はそんな会話をするやつらの声を聞いていた。そしてやつらが僕の方へやってくるのをただ見ていた。


「お前宿題やってきた?」

「やってきたけど」


僕は自信なくそう言った。


「見せてよ」


そいつは言った。


「別にいいよ」


僕はノートを取り出す。


「サンキュー」


そいつはノートをもって友達のところへ行った。


「あいついっつも一人だよなー」

「名前なんだっけ?」

「中村じゃね?」

「ああ、そうだった」


僕はやつらがそんな会話をするのをただ聞いていた。

いつの間にか授業の時間になって、皆席に着いた。

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