パンツ見せるんで
僕はその日の授業をまったく集中できずに受けていた。
「数学は暗記ですよ。とにかく一生懸命解法を覚えなさい」
教師はそんなことを言っている。
「先生、数学は考えて解くものじゃないんですか?」
一人の生徒がそういう。
「とにかく勉強しなさい」
先生はそう言って、次の問題を黒板に書く。
授業はそんな感じで進んでいった。
僕はノートに手当たりしだい問題を書いていた。
それになんの意味があるのかもわからない。とりあえずやれと言われたのでやっているだけだ。
ホームルームが終わって放課後になると、僕は教室を後にした。
そして高鳴る胸を押さえながら音楽室の中に入った。
中には誰もいない。授業は終わって部屋の中には一台のピアノと椅子と他にキーボードなどがあるだけだ。
僕はただしばらくの間、椅子に座りながらあの少女が来るのを待っていた。
しばらくたたずんでいると扉が開いた。
「ごめんなさい。待ちました?」
少女は背が低く小柄で痩せていて、目だけがとても大きくて丸顔だ。
胸は申し訳ない程度に膨らんでいて、それをセーターが覆っている。
「いったい僕に何の用?」
「あの…… 話せば長くなるんです……」
「僕のこと知ってるの?」
「あ……いや……」
僕らはそんな感じでぎこちなく会話を始めた。僕も彼女もとても物静かで話すことが苦手に見える。
「私、高峰冷夏っていいます。冷たい夏って書いて冷夏です」
「僕は中村優斗っていう名前だけど」
少しの間沈黙が続いた。彼女はその先を話し出せずにいた。
「あの……」
「何?」
「パンツを?」
「パンツ?」」
「パンツ見せるんで、お金ください」
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