空の中で

「これも、空の色、なんですよね」


眼前には数え切れぬ程の星粒がひしめきあい、幾光年も離れたこの場所に輝きを届けるべく煌めいている。

無表情に広がる夜空はそれらの光をも吸い込み、凛然とそこにある。


「ここはですね、小さな頃、お母様に教えてもらった場所なんです」


行き掛けに買ってきた小さなレジャーシート。

寝そべるには少し物足りなくて、二人とも足先がはみ出してしまっている。


「星が綺麗だから、とお母様は言っていました。だけど」


そう口にして、彼女はゆっくりと両手を掲げた。

星を掴もうとするのではなく、夜の空気に腕を浸すように。


例えようのない圧迫感と覆い切れないほどの空間。

境界は無く、宇宙の存在を語りかけてくる黒い空白。


いつだったかの彼女の言葉が蘇ってきた。


「私は、こうやって静かな空に触れているのが好き、なんです」

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