Blind

離れられない

人を思いやり、慮り、時に嘆き悲しみ、落胆の屍を乗り越えて前を進もうとするあなたは、とても尊い。

少なくとも私はそう思う。


でも、それでも私は、あなたに伝えたいのです。


人間が素晴しいのではなく、あなたが素晴しいのだ、と。

人間が愚かなのではなく、ただただ私が愚かであったのだ、と。


期待を込めた眼で周りを見ないでほしい。

裏切りの絶望を、一人で背負わずに放り投げてほしい。

何もかもを見てきたのだろう。

辛い経験もあったのだろう。

善き人に助けられ、悲嘆に暮れる日々を断ち切ったこともあっただろう。


そして。

どうしようもないことだって、既に手遅れなことだってあるのだと、あなたはきっと知っているのでしょう。


それでも。

抗いようのない現実が目の前にあるとわかっていても。

それすらも飲み込んで、明るく、誠実に歩を進めようとするあなたが、とても眩しいのです。


共に歩もうと私の手を引っ張るあなたの優しい手。

私という人間をちゃんと見て、受け入れて、選んでくれたこと。

それは本当に嬉しいことなのに。


愚かな私はあなたをまっすぐ見ることができないのです。


こんな私の独白ですら、あなたは受け止めてくれるんでしょう?


「あなたみたいには、なれない」

そう吐き捨てた私を抱き締めた時のように、繋ぎ止めてくれるのでしょう?

離れられない私を引っ張って、先に進もうとしてくれるのでしょう?


あなたと私は違う。

素晴しいあなたと愚かな私は、決して同じ道を歩くことはできない。

それでも隣にいてくれるあなたの光に、いつか私は慣れることができるのでしょうか。


私がいない方が、あなたはもっと素晴しくなれるはずなのに。

あなたはもっと先へと進めたはずなのに。

私があなたに抱くべきは罪悪感であるはずなのに。


喜びに押し潰されて自分の愚かさを見失ってしまいそうな自分に、私は抗い続けることができるのでしょうか。

いつまで、抗い続ければいいのでしょうか。


あなたがくれる正解は、とても暖かく、安らかで、やわらかいのでしょう。


だけどね、私は、どうしようもなく間違ってしまいたいのです。

黒く黒く、堕ちていってしまいたいのです。

眩しさに慣れてしまうのが怖いのです。


気付けば見失いそうなほどに小さくなってしまったそんな思いの塊を、私はいつか失くしてしまうのでしょうか。


それでも私は、あなたから離れられないのです。

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