第47話


   今


 僕は今、二人の子供を抱きかかえている。優人も優香もヒーローの人形を手に持っている。神様の人形は手足と頭がバラバラになって足元に転がっている。この先どうなるのかなんて、想像も出来ないし、想像もしたくない。

 今日は本当に疲れた。子供たちはもう寝ている。地震の後、妻が死んだとわかったときには身体を震えさせて泣いていたけれど、僕の話を聞いて落ち着きを取り戻してくれたんだ。

 僕の話は簡単だ。明日になればヒーローが助けに来てくれるというもの。子供たちはそれを信じている。だから今では寝息を立てて寝ている。泣き疲れたというのもあるかもしれないけれど、二人の顔はとても幸せそうだ。僕にとっては、とても辛い笑顔でもあるんだけど・・・・

 明日が恐い。けれど明日はやってくる。僕には責任がある。明日からも、この子たちを守らなければならない。だから今は、僕も眠らなければならない。哀しみを堪えて、身体と心を休めるんだ。眼を瞑り、心を白くしてしまう。そのために僕は、今日の出来事を振り返っていた。もう全てを振り返った。今はそう、なにも考えないでいればいい。

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