第35話


   調査


「君たちの世界は、素晴らしい。どこにあるんだい?」

 僕は本気で宇宙人の世界に興味を持ったんだ。

「それはいえない。実をいうと、私もよく知らないのだ。あの宇宙船で旅をして数百万年だ。故郷を知っている者は、残されていない。昔の映像を見ることは出来るが、今では連絡を取ることも出来なくなっている」

「それで君たちはこの星を新しい故郷にするつもりなのか?」

「そのつもりで調べている」

 僕は残されていた疑問を思い出した。そんなにも長い間調査を続け、どうして一度も姿を見せなかったのかということだ。

「この星の奴らは、野蛮だ。何度か姿を見せたことはある。けれどこの容姿は、この星では受け入れられないようだ。すぐに大きな騒ぎとなってしまう。だからじっくりと、調査を続けてきた。まさかこんなことになるのなら、もっと早く姿を現すべきだとは思ってる。けれどそれも今となっては手遅れだ。私たちはこの星を守るために戦うつもりだが、結果がどうなるのかは、正直不安でもある」

 けれど人間たちは・・・・ 隊長の部隊は全滅をした。僕は他の部隊のことが気になった。この国だけでなく、世界中のことが。そして数少ないかもしれないけれど、僕のように生き残っている人たちのこともだ。天使は生きているといったけれど、当然、家族のことも心配だ。早く人形をプレゼントしなくちゃと、思いが強くなる。

「君の家族は生きている。けれど人間は、もうすぐ、全滅するだろう。そう・・・・」

 宇宙人はその手を胸に当てていた。そして目を閉じ、頭を斜め上に空に浮かぶ宇宙船を見上げるようにした。

「やはり、君の家族は守られている。その他は、今も戦いの最中だが、一つの国が少し粘りを見せている。いや、それもここまでのようだ。今、終わった。あれではもう一人も生きてはいられないだろう」

「君には見えているのか? どんな現状なんだ? 僕も見てみたい」

「それはやめておこう。悲惨な現実だ。ときには現実から目を背けるのも、前へ進むための手段になる。君は知らない方がいいと思う」

 そうはいっても気になるものは気になるんだ。一人も生きていないということは、この世界に生きている人間が僕と家族だけということになるじゃないか。

「まっとうな人間は、一人もいない。けれど君のように生きている人は少ないけれど存在している。君が天使になにを聞いたのかは知らない。けれど、君は特別であって、特別ではない。他にも特別な人は存在している」

 生きている人がいる。その言葉だけでとても嬉しく感じたよ。宇宙人のその言葉が真実かどうかはわからないけれど、僕は信じている。なぜなのか、天使の言葉と同様に、宇宙人の言葉はどういうわけか絶対的な真実味に溢れていたんだ。

「君が本当に望むのなら、見せてあげよう」

 宇宙人は突然そういった。僕はそれほど見たいとは思っていなかった。残酷な瞬間は、見るまでもないからね。想像は出来ていたんだ。つい先ほどの爆発を想像すればいいだけのことだったんだから簡単だ。

「さぁもう一度、頭に手を乗せよう」

 けれど僕の想像は、少しも当たってなんていなかったよ。

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