第28話

   恐竜


 その様子が少しおかしくなった。天使たちが、慌てだしたんだ。必死に飛び上がり、なにかから逃げているように見えた。

 ズドンッ! 地中から音が響いた。地面がグイッ! と盛り上がってくるのを足元で感じたよ。僕と隊長は、グラグラ揺れる地面の上で、必死にバランスをとっていた。足元の地面は、バラバラと崩れていたよ。

 それがなぜなのか、バランスを崩して手を突いたときに気がついた。地面の感触が、とても生々しく感じられたんだ。ザラザラと硬く、乾燥していたけれど、それは間違いなく、生きているものの肌の感触だった。日向ぼっこをしているサイの肌、それによく似ている。実際に触れたことはないけれど、きっとそうに違いない。妻の冬のお尻にも似ている。

 僕と隊長は、大きな恐竜の背中の上にいた。地面からは十メートルも離れていた。その体長は三十メートル以上はあるように感じられたよ。首が長く、尻尾も長かった。肌の色は、黄色に近い茶色だった。

 ズズズズッー! と四方でも地面が盛り上がる音がした。色々な種類の恐竜が地中から顔を出していた。肉食の恐ろしい奴までいたよ。そいつらは僕と隊長に気がついたのか、こっちに向かって突進してきた。二本足で歩き、大きな口を開け、歯を剥き出している。僕が乗っていた恐竜に比べれば小柄ではあるけれど、その狂暴性は予想を超えていた。

 僕は肩にかけていたライフルを握り、そいつに向かって撃った。何度も何度も、渡された弾がなくなるまで、撃ち続けた。隊長も小さな拳銃を弾の続く限り打ち続けていたよ。

 けれどそれは全く意味がなかった。弾が身体にめり込んでも、そいつはなにも感じていない様子で突っ込んでくるんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る