能力

歩き始めてしばらくすると

「つかれたぁ…おなかすいたぁ…」

とアイリスがまた文句を言い始めた。

「もう少しだから頑張って」

「なんかいもきいたよ!もう歩かない!」

そういってアイリスは座り込んで歩かなくなった。

レオは溜息をつき、カバンから鉛筆とスケッチ図を取り出した。

レオは林檎の絵を描き始めた。

絵だけでは腹は膨れないがとても美味しそうに描かれている。

描き終えたと思うとその絵が次の瞬間、実体を持った。

レオはその林檎をアイリスに渡した。

アイリスは喜びその林檎を食べ始めた。

こころなしかレオは先ほどより疲れたような顔をしていた。


能力(ギフト)…それはこの世界(エテルゾニア)の誰しもに神より与えられた祝福、その能力は千差万別であり似通った能力はあれど全く同じ能力はない。

誰もが持っているが自分が持っている能力を知らずに生涯を終えるものもいる。

それは能力の発動条件にある。

例えば火を出せる能力を持つものがいたとしてその発動条件が念じるだけならば生きている間に知る可能性もある。

だが発動条件が逆立ちしながら鼻からパスタを30秒以内に1キロ食べるなどという無茶な条件の可能性もある。


だからレオは能力に恵まれているといえよう、何せ絵を描いて念じるだけなのだから、しかし代償もあるし欠点もある。

この能力は使うだけでかなりの体力を消耗する。

さらに


「レオぉ…リンゴ消えちゃった…」

長い時間維持出来ないのだ、維持している間もレオの体力は蝕まれ続けるからだ

「ごめんよ、アイリスでもお腹は膨れただろう?」

「うん!ありがとう!」

「じゃあ少し休憩して歩こうか」

レオはアイリスに疲れを見せずに言った。

「ごめん、アイリス少しトイレをしてくるよ」

「いってらっしゃ〜い」


アイリスから離れたレオは嘔吐したろくに食事を摂っていなかったためあまり出ることはなかったがレオはその場に崩れ落ちた。

レオのその小さな体には林檎一個の実体化ですら耐えきれないのだ。


「体力…つけないとな…アイリスを守るために…」



レオはまたアイリスと歩き出した。

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