逃避行

レオは一心不乱に走り出した。

母から渡された孤児院の場所が記された紙と家族の絵を握りしめ、そして泣いた。

レオは理解していたのだもう母に、父に会えないことを小さいながらに。

手を握っていたアイリスがバランスを崩しこけた。

アイリスが大きな声で鳴き始めた。

「アイリス、ごめんよ、今は走ってくれ」

涙を拭き精一杯の笑顔でアイリスに言った。

アイリスは首を振り駄々をこね出した。

レオは一瞬考え、握っていた絵をいつも背負っているカバンに入れカバンを前に回しアイリスを背負った。

アイリスは背負われたあとも泣いていたがしばらくすると泣き疲れたのか眠り出した。

レオはアイリスを背負い夜通し歩き続けた。

年端も行かぬ少年の心の内には母にアイリスを任された責任感が静かに佇んでいたのだ。


アイリスが起きた。

「レオ…?ここどこ?パパは?ママは?」

今にも泣き出しそうな声で尋ねてきた。

「今引っ越しの最中なんだよ、パパとママは前の家に忘れ物しちゃったから取りに帰ってるんだよ。だから先に僕たちは行っててってさ」

「いやだ!パパとママといく!」

「パパとママはアイリスがそんなこと言ったら困ると思うよ?」

「うっ…うぅ…」

グズりながらもアイリスはこちらの言うことを聞く気になったようだ。

「じゃあアイリス、行こうか」

そしてレオとアイリスは歩き出した。

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