Twilight Artist(トワイライト アーティスト)〜無からの創造主〜

YUKITO

理不尽

目の前には炎が広がっていた。

テーブルは焼け崩れ、食べかけであった御飯は床に散乱している。

よく両親に読んで貰っていた本、友達と一緒に遊んだボール、お気に入りだったぬいぐるみ…

つい、先ほどまであったものがその形を変え黒い炭と化していた。

言葉が出なくてただただ固まっていた遠くから男たちの怒号と足音が聞こえてくる。

家の中を歩き両親を探した。

パパ、ママと声を出そうとしたが口からは声が出ず小さな呻き声の様な物が発せられた。


リビングに行こうとしたら目の前のドアが勢いよく開き血を流した母が飛び出して来て近くにあったタンスを扉の前にに移動させた。

こちらに視線を向けたかと思うと

「よかった…貴方たちが無事で…」

母はいきなり抱きついてきて言った。

少年は声があまり出なかったがそれでも懸命に言葉を紡いだ。

「パ…パパは?」

母はその問いに答えることなく

「良い?レオ…貴方は生きて、ここから逃げるの…何処か遠いところへ…」

「パパは…?ママは…?」

「大丈夫、すぐに追いかけるわ今家の火を消すのに忙しいの消し終わったらママもパパと一緒にすぐ貴方たちの所へ行くわ」


遠くにあった足元が近づいてきて扉を強く叩き出した。

「ここだ!ここにいるぞ!」

足音が扉に集まってくる。


「レオ、貴方はお兄ちゃんだから大丈夫よね?」

レオは隣で涙を流す少女を見た。

「レオ、これを貴方に…ここに行けば大丈夫だから」

母はレオにある孤児院の住所が書かれた紙と紹介文、そして昔、父が描いた家族の絵を渡してきた。

ドンッ!

直後扉がタンスと共に蹴破られた。

母は人類が神に与えられた能力(ギフト)で氷の剣を作り出して扉と反対方向にある壁を一閃した。

壁には小さな子供が通れるくらいの穴が穿たれた。


「行って!レオ!アイリスと生きて!」

レオはその声を聞き、アイリスの腕を掴み壁の穴から飛び出した。

後ろを振り返ると壁がみるみるうちに氷に閉ざされていく。

氷によって閉ざさる前にこちらを見た母の顔は笑顔だった。




「ガキを逃した!追え!」

追おうとした兵士達の数名の動きが止まる。

足元を見ると凍りついていた。

「貴様ァァァァ!!」

男たちのリーダー格らしき者が声を荒げレオの母に飛びかかっていった。

「あの子達は追わせないわ私の命と引き換えにしても…!」

急激に周りの温度が下がっていく。

「⁈ やめろ!死ぬぞ!」

「どうせ死ぬわ、なら一人でも多く」

レオの母は能力(ギフト)の使いすぎで流れていた血がさらに溢れ出した。

「おい!お前らこの女を殺せ!」

足元を凍らされていない兵士たちがいっせいに飛びかかりその狂刃が襲いかかり、そして身体を貫いた。

「地獄への旅路…不本意だけど一緒に歩きましょう…」

「やめろ!…やめろ!」

肌が痛くなってくる、炎の痛みではない、これは凍りつく冷気の痛み。

「レオ…生きて」

母は願った。

我が子の幸せを


次の瞬間その家から音が消えた。

炎で焼ける音もせず、足音も聞こえない、ましてや家族の笑い声も…

その家の全てが凍りついた。

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