第5話 マニュキュアの女

ジローは建物の前に佇む数人の男女の横をすり抜け鉄製の扉を開けると耳を貫くような大音響が彼の体に突き刺さって来た

其れは店内に入るほど大きくなり天井のスポットライトがグルグルと廻り混雑している店内を照らしていた。

中央がホールになり見渡るように高くなって丸テーブルが幾つも配置させていた。

ジローは人混みを掻き分けながら何かを探している様な目で廻りを見渡し、手に赤いマニュキュアをしている女性を見付けると近づいて声を掛けた。

「ねえ、君の車サバンナ」と言ったが、その声は直ぐに音にかき消された。女性も彼の存在を無視するように踊り続けていた。ジローは彼女の肩に手をかけけると女性は驚いた様子で彼に視線を向けた。ジローは驚いた彼女の目を見ながら「ナンパじゃないよ、車で来たの」と大声で言うと、女性は手を横に振りその場から離れて行った。ジローは逃げる様に離れる女性を見ながら「俺のタイプじゃないよ」と言い、またホールの中を歩き始め。

数人赤いマニュキュアの女性を見付けては声を掛けたが、車の持ち主は判明しなかった。

ジローは半ば諦めた様子で表に出ると丁度京一と健一が玄関前のテラスで煙草を吸っていた。健一がジローを見付け「ジロー何やっていた」と声を掛けた。

ジローは近づきながら「サバンナの持ち主探し」と答えると「熱心だ」と呆れたように言った。すると京一が「女だろ運転していたのは」と察したように言うと健一が「そうなのか」と急にジローに視線を向け。

「そうだ。赤いマニュキュアの女」

「居たのか」と健一の声にジローは首を横に振り「分からない」と答え、駐車場へ足を進めた。

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