第4話 浜ナン
コンテナヤードへ向かう高架橋の繋ぎ目を車が通る度に発する断続的な音と建物から漏れる大音量のスピーカーの軽快なリズムをジローは護岸の駐車場で聞いていた。対角線に有る外灯の明りが満車に近い車の列を照らして、オレンジ色が海の黒さを強調させて妙に神秘的な雰囲気を作り出し潮風が生臭い匂いを運んでいた。
「京一遅いな」と岸壁のフェンスに凭れ掛かけていた健一が答え「トイレの後に追いかけると言っていたから、多分大きい方じゃないか」とジローが駐車場の車を見渡ながら言うと目線が一台の車の前で止まり、足が自然に其処へ向かい歩き出した。健一が「ジロー如何した」の問いに「サバンナだ」と歩きながら答えた。
胸ポケットから煙草を取出そうと手を伸ばし「さっきの奴か。いや、女だったな。」とソフトパッケージから1本取出しパンツのポケットのライターを探した。
ジローは車の前に立つとナンバーを見て「浜ナンか」と独り言を言い運転席を覗き込み、ミラーにさがる飾りに目が留まった。薄らとした記憶の中で、この車は一緒だと確信する何かを感じていた。「この車だな」とジローは再び呟き少し離れると助手席の黄色のバックに目が留まり、「俺の感は当った、やはり運転手は女だ」と
感じたものは確信へ変わり続けてジローは「結構センスが良い車だ」と低く呟いた。
京一は駐車場の空きスペースへ車を停めている最中で、横に停まっている大型車両に神経を集中していた。パワステでないハンドルの切り返しに額に汗が滲んでいた。京一は横の車を睨み付けると「デカすぎるお前は」と捨て台詞を言いドアを開け外に出ると建物へ向かい歩き始めた。
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