第3話 赤いマニュキュア

ガラスを勢いよく流れる雨越しにジローは横目で凝視すると、ハンドルを押さえる白い細い手が微かに見えそれ以上内部の様子は判別出来なかった。

その時後ろの健一が、パーキングと叫び、ジローは看板に促されるように視線を左に向け黙って左に移り離れると、サバンナは前方に消えて行った。

「ちぇ、今少しだった」とジローは呟き、相変わらずポテトを口一杯に入れた健一は「なにが」と言葉にならない声を上げた。

「並走して誰が運転しているか見てやろうとしたけど、ハッキリ見えねえ雨で。」

の言葉に健一は「気にしない、また何処かで合うかもしれねえし」と答えた。

ジローは「あの白い手は女かも知れない」と思い返したように言うと、健一が「女」と声を荒げ「あんなスピードを出す女、おっかねえ」と笑い声を上げ「細い手の男かもよ」と付け加えた。

でもジローは「多分女だ。俺には分かるチラッとだけど、赤いマニュキュアが見えた」と自慢げに答えた。

すると健一は「ジローは女に飢えているから男の腕も女に見える。相当重症だ」と馬鹿にした。ジローは黙ってパーキングの矢印を確認して車を白色ラインに沿うように進めパーキングでは案の定京一だけが待っていた

健一、ジロー、京一の三人で珈琲を飲みながら一夜ひと時を満喫すべく意見を出し合ったが中々定まらず、結局京一の案を採択し現地で落合う約束を交わし、出発すると通り雨は既に止み澄んだ空気を漂わせていた。

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