第2話 光の筋

京一は自分の自慢話を終えると少し悪びれた声で言った。

「ジローもフェアレディーZ買ったって聞いたけど。今度見せてくれよ」との言葉にジローは「240ZGだ」と言うと電話口の向こうで驚いた様子で京一が叫び。

「お前何処にそんな金が有るのだ」と言ってきた。俺は少し京一の自慢話に勝ったような気分になり、「金ならどこにでもある。だけど240ZG擬きだけどな」と笑った。その言葉に京一は「ちぇ。騙したな。金が有るなら貸してくれ」と舌打ちをするとジローは付け加える様に「でもエンジンはL26で加速力は十分だし、外見は誰が見ても分からないようにしてある」と相手の出方を伺うと京一は一呼吸おき、「久しぶりに会おう」と言い出し、ジローは久しぶりに皆で集合しようと言う言葉に京一が乗り、場所をジローが第三京浜港北パーキングに決めた。仲間のサブには京一が健一にはジローが話す事となった。

高校時代から色気が絶えない誠は家には居るみたいだったが、連絡が取れず京一に任せる事にした。

多摩川を渡り川崎へ真っすぐ伸びるオレンジ色の外灯が第三京浜の特長でジローは追い越車線を図太い排気音を後ろに流しながら港北パーキングへ向かい進んでいた。健一は相変わらずポテトチップを頬張りながら寛いで

ジローはミラーで時々彼の様子を気にしながら、断続的に流れる白線を凝視していた。寒気の到来は早くボンネットに雨粒が突然叩き付け始めジローは

「もう降ってきたがった」と窓を閉めて呟いた時にはボンネット一杯の雨粒が窓一面に張り付いては後方へ向かい飛んで行った。ライトに輝く雨と流れるオレンジ光の向こうに赤く点が薄らと見え始め、みるみるうちに彼らに向かって大きくなり、其れは大型のタンクローリーでジローは「ちぇ、デカいのが前を塞いでやがる」と呟いた。その言葉に健一は「行け、行け」とシートを揺らし、其れに対応するかのように隣車線に視線を変えると、ミラー全体に白い光の玉に目を細めた。その光はガラス面に付いた水滴に反射して車内へ入り込んでジローは瞬きをすると目を凝らし光の筋を追った。その逆光は2つに分かれ車のヘッドライトとして認識する頃には、前方のトラックが目の前に迫りジローは反射的にアクセルを緩めウインカーレバーを上げた時に隣を闇に溶け込むような黒色の車体が光と共に駆け抜けて行った。弾丸のように通り抜けたのはサバンナRX―3路面から巻き上がる水飛沫がオレンジの車体に当る音をジローは感じながら左車線に向きを変え加速させた。

ガラスに跳ね返る雨をワイパーが滲む赤いテールランプを拭い、遠くなって行くサバンナを追う様にジローはアクセルを開くとマフラーから発する重低音は大きくなり、やがてタイヤから出る水飛沫がガラス一面に広がり始めた。ジローはワイパーを高速にして左の車線へ移ると、サバンナRX-3と並走するように並んだ。

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