第21話 師の想い
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咲の祝辞は立派に務め教師として最初の卒業生を送り出すことに感無量の気持ちを言葉にした。また、自分が教師として携わる機会を与えてくれた志野と祐之介以下自分を育ててくれた師への思いも盛り込み皆を感動させた咲は最後にこう締め壇上を後にした。
「卒業生の皆さん、此れから諸々の経験をするでしょう。時には自分を諌め、時には自分を苛立たせ、時には憐み、怒り、そして喜ぶ時が参りましょう。経験から学ぶとは、自分にとって残す物と捨てる物を見定めるのです、決して経験から自分を卑屈にして結果から歩みを止めてはなりません、自分の芯を持ち、突き進むのです。 然し、決して妬み、蔑んではいけません。人を上と下とせず、学んで下さい。」
志野は咲の成長と心に宿った教育者としての覚悟を感じ、咲なら私の後を任せようと思っていた自分が間違っていない事を確信し「自分がまだ遣れると思った時が引き時かも知れない。この学校は私と祐之介が満開の華にしたもの、今一度芽生え満開の花園を育てる者に任せよう。」と心の中で自分に説いていた。そう心に決めた志野は卒業式の最後に壇上に立つと壇上から生徒たちを見渡し満干な思いを口にした。
「学校長として皆さんに伝えたい言葉があります。学校と云う畑の中に種として入学され、学業に勤しむ中、蕾となり、いま此処に満開の華となり卒業していきます。此れから華は依り気品と優雅さを兼ね備え人を魅了し、実となり新たな蕾の肥やしとなりなさい。」卒業生は皆一応に一つの歌を合唱した。
「花の蕾は何時しか咲き誇り、数多くの蕾を作る種となる」志野と有山の教えが講堂に響いた。
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