お出かけ
土曜日、小雨が降っている中私たちはあじさい祭りに向かった。歩きながら陽介と一緒にソフトクリームを食べた。冷たくて甘くて驚いた。
「ありがとう。一緒に食べるとおいしい」
「なんか...雨音さんって不思議だよね」
そうかな、と言ってみたはいいもののやはり人と違うということを自覚せざるを得なかった。
紫陽花は雨の雫が滴っていて、とても綺麗だった。楽しかったが、それでも終わりの時間はやってくるもので、私は陽介に1枚の手紙を渡して別れた。
「陽介へ
急なお手紙ごめんなさい。
可愛い便箋じゃなくてごめんなさい。
今日はあじさい祭りに連れて行ってくれ ありがとう。
この1ヶ月、会いに来てくれてありがとう。本当に嬉しかった。
今日で陽介と会うのは最後になります。
なぜなら私は、人間ではないからです。信じられないかもしれませんが、本当の事です。
梅雨は力の弱い妖も、梅雨の期間だけ人間の姿になれるのです。だから私は人間の姿になり陽介と話し、お出かけすることができた。
騙していたということになります。本当にごめんなさい。
それでも私は、会って話すことができて嬉しかった。
願わくば、あなたと一緒に彼岸花を見に行きたかった。
私はこの1ヶ月幸せでした。陽介は私のこと忘れてしまうだろうけど、私は忘れません。
ありがとう。 雨音」
これでよかったのだと自分に言い聞かせた。この苦しさの正体は分からなかったけれど、いつかわかる日が来るのだろうか。
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