日常

 陽介と会って約1ヶ月が経った。ほぼ毎日と言っていいほど会っていた。陽介とは色々な話をした。陽介の学校のおかしな先生の話やふと疑問に思ったこと、私には理解できない話もあったがとても楽しかった。

 そして今日は好きな花の話になった。陽介は彼岸花が好きなんだそうだ。

「私も好きだけど、なんか陽介の雰囲気と違う気がする」

「母さんが好きだから、自然とね。雨音さんは紫陽花か...俺も好き。何か理由とかあるの」

「なんか親近感が湧くというか」

 寿命が同じだから、とは言えない。不思議そうな顔でこっちを見ているので「心が落ち着く」と言っておいた。

 帰り際、陽介は私に1枚の紙を渡した。

「これ、あじさい祭りのチケット。梅雨明けが近づいてたからタダでもらったんだ。一緒に行ってくれないかな。ここから結構近い大きな公園でやるから遠出でもないし...」

「ありがとう。紫陽花が見られるなんて、楽しみ」


 じゃあ今度の土曜に、と言って別れた。陽介はテストがあって、あじさい祭りまで会えない。楽しみで頬を緩ませていると急に眩暈がした。自分が置かれている立場を忘れていたのだ。もう迫っているのだ。覚悟を決めなければならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る