紫陽花が咲く頃に

金木犀

出会い

 私は今、陽介という男子高校生と話している。学校から帰る途中、雨が降ってしまったため私のいる公園で雨宿りすることにしたそうだ。梅雨の時期なのだから傘ぐらい常備しておけばいいのに、という言葉は今更どうしようもないことを知っているから言わなかった。


 陽介は私に「らいん」というのを聞いてきたが、何が何だかわからないので答えることができなかった。

 しばらく黙っていると、陽介は気まずそうに数字が11個並んである紙を渡してきた。さすがに携帯電話の番号であることはわかるが、あいにく私は携帯電話を持っていない。

「迷惑かもしれないけれど、もらってほしい」

「...ごめんなさい。私、携帯電話を持っていないの」

「そうなんだ。じゃあ、これからどうすれば雨音さんに会えますか」

 どうしていいかわからなかった。けれど、毎日この公園にいることは伝えた。


 それから、陽介は毎日私に会いに来てくれるようになった。

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