エクスカリバーかついだカードデュエラー3
近くのベンチでこの世の終わりって顔をした男性に声をかけた。
相手の戦績を確認すると1勝4敗。初めてデュエルする相手としては打ってつけだ。こちらがズブの素人とわかると、向こうも
こちらは何もかも手探りの状態とはいえ、相手のデュエル経験もどんぐりの背比べで、しかも負けが込んでいる初心者。ガイドブックを確認しながらでも構わないみたいだし、軽い気持ちでデュエルを始めた。
ガイドブックに載っていたオーソドックスな陣形をしく。前衛の両サイドに剣兵、二列目中央に騎兵、後衛の両サイドに弓兵を配置し、ユニットでバツの形を描く。アイテムはあまり役立ちそうにないけど、念のため手札に入れておく。
相手は剣兵を前衛に3枚並べ、二列目中央に盾兵、その背後に弓兵を配置。Tの字を描いた攻撃的な布陣だ。全てのユニットにプラスもマイナスも付いていない。
経験値の少ないこちらが先攻だ。先攻後攻はフェイズごとに入れ替わるのでアドバンテージは極わずかでしかない。
ユニットのカード上に立体映像が表示された。動きはなく精巧な駒を置いている感じだ。フィールドの左下には各ユニットのステータスが、右下にはコマンドログが表示されている。
デュエルが始まった。お互い攻撃できるユニットで攻撃するのみで、さしたる戦略がない。その上、1ターン消費するだけの価値があるアイテムも持っていない。
はたから見れば、いかにも初心者同士の眠気を
そうはいっても紙一重の差で、次のターンで敵を全滅させられるところまで追い詰めました。デッキ的に策をろうす余地がないので悔いもなかった。反省点をあげるなら、ユニット構成と開始時の陣形だろうか。
結果的に、攻撃力の低い弓兵の多さがあだとなった。デュエル前は攻撃力ゼロの盾兵の存在に疑問を感じていたけど、相手が弓兵の前に配置した盾兵が意外に
デュエル後、相手が要求してきたカードは〈牽制〉。高ポイントに目がくらんだのだろう。現時点では活用できそうにないカードだったのでデュエル上のダメージは少ないけど、
◇
初めての戦闘に破れたとはいえ、手応えは感じていた。同レベルのプレイヤーが相手なら、ユニットの配置――すなわち、布陣が勝敗を分けるという教訓も得られた。
さっさと次の戦闘に移るべきか。それともルールのおさらいをして万全を期すべきだろうか。ただ、手持ちの盾兵にはマイナスが付いているし、カードの交換でもしない限り、戦法を変える余地がない。
ふとニャゴ様に目を移すと、ベンチの
「健吾、お腹が減ったにゃご。腹ごしらえをするにゃご」
かくいう自分も
「あそこにコンビニがあるにゃご」
ニャゴ様が指さす先に、本当にコンビニがあった。ラウンジ同様サイバーチックな外観だけど、店内は正しくコンビニ。おにぎり、パン、お弁当と
「こんなパサパサの固いエサは食えないにゃご。ニャゴは生後一ヶ月の
幼気な子猫はそんなこと言わない。菓子パンよりも高かったんだぞ。我慢して食えよ。胸の内で悪態をつきながら、そんな思いを眼差しに込めた。
「でも子猫用って書いてありましたよ?」
「一口に子猫と言っても幅があるにゃご。当然、猫の好みにも幅があるにゃご」
結局、菓子パンより高いミネラルウォーターを買ってドライフードをふやけさせた。ダブっていた槍兵(マイナス付き)1枚を追加で失った。
ワガママを言うばかりで何もしないニャゴ様への気持ちが急速に離れていき、それに反比例するように、エクスカリバーに対する思いが強まった。
正直に言えば、買い物の時も重くて邪魔だった。だけど、その重みはエクスカリバーがこの世界に存在する証であり、この世界で生きている実感を僕に与えてくれている気がした。
それに、右も左もわからない世界では、手に武器を持っているだけでも安心感が段違いだ。
予定外の出費で2枚のカードを失って残りは7枚。
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