第三章 もうひとりの吹奏楽部員 3 進路 3
凛はその日練習に行かなかった。
夕方、高校生には似合わない駅前の繁華街にいた。
凛はさまよっていた。わい雑な繁華街の路地を清楚な女子高生が歩いていること自体危険だった。だが、凛はそんなことも気にしないくらい追い詰められていた。
凛は看板の前に立っていた。それはいかがわしい風俗店の看板だった。
「お金が、お金が要る」凛は昨夜からそればかり考えていた。
ネットで女子高生がお金を得る簡単な方法を調べれば、当然出てくる答えは予想できる。いつもならそんなこと、考えもしない凛だったが、今は神経が疲弊してしまい、安易な方向に傾いていた。
「お金さえ手に入れば、すぐに辞めればいい」あまりにも短絡な思考に凛は支配されていた。
心臓がドキドキしていた。
看板の奥は階段で降りるようになっていてそこは薄暗かった。
凛は足を踏みだそうとしていた。
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