第三章 もうひとりの吹奏楽部員 1 二学期

 コンクールが終わり、夏休みの間は部活も休みになった。


 二学期が始まり部活が再開された。真っ黒に日焼けした直は久しぶりに楽器に触れると思うと、うれしくなって部室に入った。

「おはようございます!」

「直、久しぶりだねえ。あんたどこ行ってたの?真っ黒だよ」凛がそこに居た。

「はい、家族でグアムで遊んでました」

「へー、リッチなんだねえ、いいなあ」

 直は嬉しくてつい口に出したが、凛がちょっと寂しそうにしたのでしまったと思った。

 そこへ美津がやって来て

「直!あんた真っ黒に日焼けして、どこ行ったの!」

「はい、ちょっと…」

「グアムだってさ、生意気に」凛が冷めた目で言った。

「なんだって!グアム?うん?ちょっと直、こっち来て」何かを見つけたように美津が直の手を引っ張って凛と一緒に楽器倉庫に連れ込んだ。

「はいはい、男子に見つからないように奥入って」

「部長!な、何ですか?」

 美津と凛は直の後ろに回ってブラウスを首までめくりあげた。

「きゃあ!ぶ、部長!な、なにすんですかあ!エッチ!」

 直は顔を真っ赤にした。

「ほうら、やっぱり。直、あんたビキニ着たでしょ!背中にくっきり紐のあとがついてるじゃん!」

「はい、確かに。それもお母さんとお揃いで着たんで」

「えー!親子でビキニ!まあ、直のお母さん綺麗だもんね」

「さすがに、おっぱいおっきい子はいいわねえ、私も凛も貧乳だもん」

「ちょっと、私は着やせするのよ!これでもCはあるわよ」凛が怒った。

「ところで直は何カップなの」美津が聞いた。

「恥ずかしいですう」直はブラウスを直しながら顔を赤らめた。

「女の子どうしいいじゃない」

「Fです」

「エフウ!確かに、直が倒れた時さ、あたし直の呼吸が楽になるようにあんたのブラジャーはずしたんだけど、ホック外した途端ボロン!ってすごいこぼれたもん」

「やめてえー!恥ずかしいです!」直はますます真っ赤になった。

「ようし直、二学期はしごいてやるわ」美津が笑いながら言った。

「ひえー!凛先輩だけでもいっぱいなのに、美津先輩までしごかれたらやせちゃいますよお」

「あなた、それくらいがいいんじゃない?」凛が直のお腹をつかんで言った。


 ひととき笑い声のあと、美津が真顔になって凛に言った。


「凛、ヒロのとこ、行く?」

「美津!直がいるのに」

「いいわよ、そろそろ知ってもらっても」

「え?何なんですか?」


 直は不思議な顔をして聞いた。


「直、吹奏楽部の部員って何名?」凛が聞いた。

「ええっと、確か41名じゃ」

「本当はね、42名なの。ひとり休部してるの」

「そうなんですか」

「今から言う話はあなたに初めてする話だけど、良く聞いてね」


 凛が話し出した。

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