第16話
「あのね、私たちが改造された理由は、この世界の観光ツアーのためのプロのガイドを作るためなのよ?私たちは、実験に付き合ってる代わりにツアーガイドになれる事が内定してるの。だから、付けられた機能もガイドとして役に立つものばかりなのよ?」
「え?それって、就職先はここってこと?」
「そういうこと。将来が保障されてるんだから、私もあんたも進路で悩まなくて良いってことよ。」
「えぇ…………そんな真実知りたく無かったなぁ…………」
僕のテンションは一気に下がった。
だって、そうだろう?
自分がものすごい人間になったって感動してたら、それはツアーガイドになるためなんですよなんて現実的過ぎる真実で叩き落とされたんだから。
「何でショボくれてんのよ?就職先が早々と決まってるのよ?もっと喜んでも良いんじゃない?」
「そんな安定より、僕はハラハラドキドキする、夢のようなひとときが欲しかった…………」
僕は脱力して、テーブルに身体を預けた。
溜め息が、数え切れないくらいいっぱい出てくる。
「はぁ、もう何か全部どうでも良いや…………」
「…………今から言う事をメモしなさい!08────」
「は?え?」
混乱して、書くものを探していたらサキちゃんが何かが書かれた紙をくれた。
見てみると、それには携帯の番号とメールアドレスが書いてあった。
「良いの?」
「ただし、関係ない話でかけてこないでね?」
どうやら、サキちゃんは自分がいろいろ教えたことで僕がすごく落ち込んだから気にして連絡先を教えてくれただけのようだ。
それでも、嬉しい。
「ありがとう~!」
僕が思わず抱きつこうとしたら、サキちゃんは素晴らしい身のこなしでかわした。
「ふざけんな!」
サキちゃんの怒りを僕は笑顔で受け流す。
「そしたらさ、サキちゃんは自分にどんな機能が付いてるのか知ってるの?」
「知らない。興味ない。だって、ガイドになった時にキチンと仕事が出来ればそれで良いんだもの。」
「そうなんだ…………仕事する時まで使っちゃダメなんて言われてないんだから、試しに使って楽しんじゃえば良いのに。」
いろいろすごい機能が使えるのに、興味がないなんて勿体なさすぎる。
「だって、それ使って自分が調子に乗りすぎたら困るから。」
言われて、僕には思い当たる節がありすぎたので思わず固まる。
「自分が元から凄いんだって勘違いしちゃいそうだしね。」
さらにとどめを刺されて、僕は完全にノックアウト。
僕は、サキちゃんが危惧してることを全部やっちまってる。
「…………フフフ、持ってるものは使うためにあるのさ!」
僕は開き直って、これからここで働き始めるまでの間、フルで活用するつもりだ。
…………そう言えば、せっかく始まりそうなサキちゃんとの恋の予感にも使えそうな機能はないのだろうか?
「…………トマリくん、羽目外しすぎないようにね~」
と、親切なトーナさんは妄想中の僕に釘を刺すことを忘れなかった。
「はい、もちろんですとも!」
キッパリとした適当な返事。
トーナさんとサキちゃんの盛大な溜め息を聞き流して、僕は夢と希望に満ち溢れる妄想に再び浸かりこんだ────
異世界人に改造された身体は謎が多い 如月灯名 @kinoo
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