第13話
「だよね…………」
僕の嫌な予感は否定して欲しかったのに、見事に肯定されてしまった。
「トロイカは愛想はないけど、真面目なやつだったんだけど…………ファティマスと仕事で組み始めて結婚してからファティマス方面に行ってしまってね。止める事は出来なかったよ。」
遠い目をするトーナさん。
その気持ちが何となく僕にも分かった。
「だから、君にどんな機能が出てるか知るために日々の事や気付いた事を教えてくれるかい?」
「もちろんです。」
僕はトーナさんに出来るだけ協力してやろうと思った。
だって、この様子だと絶対トーナさんが二人の尻拭いをさせられているから。
「さて、今日の検査は終わりです!さて、何か飲もうか?君はお菓子の追加を持ってくるよ。」
「僕も手伝います。」
検査部屋を出ると、そこに可愛い女の子が居た。
色白でさらさらの茶色い髪の毛、目が二重で大きくて…………
「何、ジッと見てるの?」
自分がその子をすごい観察してしまっていたことに気付いたのは、そう声をかけられたからだった。
その、警戒しているような口調に僕は申し訳なくって俯いた。
「トマリくん、この娘が君と一緒に連れて来られて改造されたサキちゃんだよ。」
言われて思わず顔を上げると、サキちゃんが僕をギロリとひと睨みしてからトーナさんを睨んだ。
「改造って言わないで下さい。」
その様子を見て、ああ、僕と同じように二人に説明もしてもらえず改造されたんだと思った。
そして、何となく同類だと思ったら親しみを感じた。
そして、可愛い女の子とあわよくば仲良くなりたいという下心も。
「よろしく!サキちゃん。」
「…………フン、お気楽ね。」
どうやら親しみを感じたのは僕だけだったようで、その言い方にはトゲがあった。
「…………さて、サキちゃん、早速だけど検査の方お願いします。トマリくん、こっちに飲み物とお菓子が入ってるからゆっくりしててね。」
トーナさんは、そう言ってから隣の部屋に行ってしまった。
サキちゃんも後に続いて行く。
僕は扉が閉まったのを確認してから大きな溜め息を吐いた。
────
翌日の学校、僕は自分の席でぼんやりしていた。
だって、いつも休み時間の度にお喋りをしている坂田が今日は三笠さんとずっと喋ってるのだ。
さすがに想い人と仲良く喋っているのに邪魔は出来ないと、僕は机に突っ伏して寝たフリ。
耳はもちろん、二人の会話を拾っている。
「…………そっかぁ!三笠さんって、あれが好きなんだ。実は俺も。」
「え、ほんと?あれって、すごく良いよね!」
二人の楽しげな会話。
自分にはこんな春っぽいやり取りなんか、やって来てくれないのか?
僕は昨日の事を思い出した。
一緒に改造されたというサキちゃん。
見た目はとてもか弱そうだったから知らない場所で一人とか内心怯えてるんだと思ったけど、そんな様子は欠片もなかった。
僕の所にも坂田のように青春がやって来てくれるのを願った。
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