第10話
学校に着くと、僕は持ってきていた菓子パンを豪快に齧る。
何だか異様にお腹が空く。
思い出して見たら、あっちに連れてかれた翌日からのような気がする。
これも何か関係あるのだろうか?
「泊、おはよ。朝飯食ってきてないのか?」
僕より少しだね遅くきた坂田が自分の席に鞄を放ってからすぐにやって来た。
「いいや、朝飯はいつもの倍以上食ってきたんだが…………」
パンをもしゃもしゃやりながら返事をすると、坂田が僕の頭に手を置いた。
「キミ~、成長期ですか?羨ましいなぁ。」
頭のてっぺんをグリグリされて、苦笑い。
坂田は150センチ台で止まってしまって、もうちょい伸びるようにと毎日大量の牛乳を飲んでいるって言ってたくらいだからすごく悔しいのだろう。
「いやぁ、楽しみだなぁ~、どんくらい大きくなるかなぁ~」
「いいもんね、別に~俺身長高くなくても格好いいとか言ってくれる子が現れたからね~」
「誰だ!そんな目が悪い娘がいるのか!」
妙な節を付けて自慢してきた坂田にふざけて返してやった。
「身長とか、こだわらない娘って良いよな。俺にもそんな娘が現れないかなぁ~」
こっちが僕の素直な気持ち。
羨ましいけど、仲の良い坂田が嬉しそうな顔をしてるからこっちまで嬉しくなってくる。
「それって、やっぱ、三笠さん?」
小さく照れながら頷く坂田なんて初めて見た。
「告白された訳でもねーのに、勝手に舞い上がってるんだ。俺、そんな事言われたの初めてでさ。」
「だよな。僕と一緒で、女の子に縁がなかったからな。」
そんな話をしているうちに朝のホームルームが始まり、慌てて話を中断した。
坂田の幸せな気持ち貰ってたら、僕の秘密も話したくてウズウズしてくる。
…………だから、実際に特殊能力分かってからじゃないと冗談だと思われるだけだって!
言いたい衝動を抑えるのに一苦労した。
────
「泊、いったいどうしたんだよ?今日のお前はどうした?」
放課後、僕は興奮した坂田に詰め寄られていた。
そりゃそうだろう。
今日、テストが三つ返ってきて二つ満点で…………体育の授業でも、50メートル走一緒に走ったクラスメイトたちに圧倒的な差を付けてゴールした。
テストで満点なんて、高校入ってからほとんど勉強してない僕にとってはあり得ない。
ゼロが一個少なくても納得してしまうくらいに。
50メートル走は先生があり得ない記録だと呟いてストップウォッチの故障かと唸っていた。
そう、いつもビリかその辺りをウロウロしている僕にとってはあり得ない事だったのだ。
理由ははっきりしていた。
僕が異世界で改造されたから。
だって、改造前のテストは点数悪くて改造後は二つとも満点なのだから。
走るのだってそうだ。
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