第9話
「実験っていうのが、ちょっと言いにくいんだけど…………トマリの身体を改造して、いろんな機能が増えて便利だなぁ~というやつなのよね。それで、それのデータを集めるためにこっちに来てもらうために、そっちの時間で夕方五時くらいに勝手に向かうようにして見ました~!」
「いや、それ嫌って言っても来るようにされてるから、協力とかって話じゃないですよね?」
ファティマスさんは完璧に目を逸らして話している。
「だってね、その時間予定が入ったから無理とか言われたら困るし~、いちいち呼びに行くの面倒だし~、ほらっ、他にも実験中の人がたくさんいるから忙しいのよ?」
何か嘘臭い。
「…………要するに、僕は宇宙人に拐われて人体実験されたっていう人たちと似たようなことになってるんですか?」
僕はファティマスさんの言葉はスルーして、
「ん?良く分かんないけど、そんな感じかしら。ねぇ?トロイカ?」
そう声をかけてマスクを外す、ファティマスさん。
何て、人なんだ…………
空気が悪くなった所で、トーナが咳払いした。
「まぁ、とにかく。トマリくんにはいろいろすんごい機能がつけてあるから。日常生活が楽しくなるぞ?そして、今なら、暇な時間にこっちの世界の観光し放題という特典付きだよ。ここは、自然が多くて眺めの良い場所いっぱいあるから。」
「そうそう。お得感いっぱ~い!また、次来たときにでも、いろいろ説明したげるから。今日はこれでおしまい!後はゆっくりしましょ?」
絶対、ファティマスさんは説明が面倒になったんだと思う。
でも、何だかワクワクしてきた。
だって、自分が違う世界にやって来て改造されるとかゲーム以外じゃ絶対味わえないことだと思うし!
テレビの枠からリビングに戻って、頬っぺたをつねってみても痛みを感じて風景がかわらなかったから夢じゃない!
僕はその夜、興奮し過ぎて眠れなかった。
何度も布団から出てはアルル花粉症対策のスプレーを眺めて、夕方の事を思い出して興奮した。
────
翌朝、一睡もしていないにも関わらず僕は気分爽快元気いっぱいだった。
学校までの道のりも楽しくて仕方ない。
坂田に教えてやろうかどうしようか一瞬だけ悩む。
言うだけでは、きっと信じてもらえない事は分かっているので、まだ話さない事に決めた。
…………さて、新しく手に入れた機能で何しようかな?
そう考えてから、恐ろしい事にようやく気付いて固まった。
…………何の機能を付けられてるのか分からん。
そう、僕が分かるのは夕方五時くらいになったら強制的にあっちに行っちゃうってことだけ。
それ以外は、どんな機能を付けられてるのか一個も聞いていない。
上がったテンションが一気に下がる。
…………今日、あっちで訊いてみよう。
そう、強く思った。
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