第8話

「そうそう!アルルにやられて死にかけてるのに、優しくしてくれなかったらそりゃ怒るわよね?私も覚えてる?ファティマスよ。」


僕は笑って誤魔化した。


だって、三人の中で一番恐ろしいから、この人だけは怒らせちゃいけない気がする。


ファティマスさんはシンプルな半袖とズボンを纏っている二人とは違って、露出度の高い赤色の派手な服を着ていた。


サイズが合っていないようで、出っ張った部分が押さえ付けられているのがよく分かる。


それとは対称的な長いストレートの艶々した黒髪は清楚に見えて、顔にかかる部分が一直線に切り揃えられている。


「僕は、泊 鳴滝です。」


僕ももう一回自己紹介しておいた。


丁寧な対応されてんのに、雑な事をして怒らせたらまずいだろうと思って。


「いろいろ、順序が悪くてすまんな。あ、あと、トマリの身体はそっちの時間で夕方五時くらいになったら勝手にこっちに来るように改造しといたから。」


トロイカさんが爽やかに笑いながら言った。


…………いや、何爽やかに言ってんの?改造?身体にメス入れられた?何か埋め込まれた?


僕の顔が自分でも分かるくらいあからさまに引き吊る。


「トロイカ!また!説明の順番を厄介にしてっ!私が説明するから、あんたはもう口開くな!」


怒ったファティマスさんが、僕のマスクを奪い取ってトロイカさんにつけた。


使用済みマスク、使って大丈夫なんすか…………?


トロイカさんが暴れださないか様子を見ていると、不貞腐れたように床を眺めながら黙ってしまった。


…………恐るべし、ファティマスさん。


「トマリ、今聞いたのは聞かなかった事にしてくれない?今から、ちゃんと順番に説明するから。」


僕は二度頷いた。


パニックになろうが、どうなろうがファティマスさんに逆らってはいけない。


それだけは聞かなくても分かるから。


「実はね、一週間前にトマリの所に実験の協力お願いの封書を届けてたはずなんだけど、手違いでそれが届いてなかったみたいなの。協力してくれるならあのテレビとかいう箱の前で待っててくださいって。私たちは封書が届いてないって知らないまま、待ち合わせ場所に居たトマリを連れてきたの。それで、連れてきたらいろいろ説明をしてから協力してもらうっていう手順なんだけど、アルルでおかしくなっちゃったトマリに説明しても無駄だし、待つのも面倒だからって、説明を後回しにして実験に協力してもらってたの。」


ここまでは分かる?と確認されて、微かに頷いた。


「話してもらったことは何となく分かりましたけど。…………泊ゲームとかって考えたら。でも、何でテレビの中に入れるのかとかここが何処なのかとか自分が何をされたのかとか分からない事がたくさんあるので、それの説明もお願いします。」


そう、ゲームだと考えれば、パニックになんてならない。


逆にワクワクする展開だ。


そう考えると、不安や混乱が少しずつ消えていく。


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