第4話
しかし、思い出すのがめんどくさくなってやめた。
だって、そんな恐いことは無かったような気がするから深く考える必要はなさそうだと思ったのだ。
「今、普通に元気だし。逆に普段よりすっきり起きれてるし。めっちゃお腹空いてるし。どこも悪くないと思うよ。」
「そっか。それならいいけど。顔色もすごく良いしね。でも、何かあったら言いなさいよ。」
「分かった~」
僕は軽い返事を返してから、残りのご飯を掻き込んだ。
いつもの倍量の食事を終えて、さすがに食べ過ぎかと思ったのだがいつものように満腹感がない。
成長期か?と一瞬考えて嬉しくなる。
僕はまだまだ身長が低くて、それが悩みだったから嬉しい限りだ。
いつものように準備をして、いつものように家を出る。
「どけて、どけて!」
驚いて声のする方に顔を向けると、すごいスピードで自転車が接近していた。
とても避けきれない。
僕は思わず目を瞑る。
身体は恐怖で固まっていた。
衝撃が来る!そう思ったのに、来なかった。
来たのは何かが触れた感覚だけ。
僕は恐る恐る目を開けた。
目の前には地面に転がって呆然としている男の人と、前輪辺りがぐしゃりと見事に潰れた自転車。
一体、どうなったのだろうか…………
「…………君、大丈夫なのかい!?」
ズボンの両膝の部分が盛大に破け、そこからけっこう血が流れている。
それなのにその人は足を引摺りながらも、僕の方の心配をしている。
「あ?え?大丈夫です!僕にはぶつからなかったみたいです。」
僕は、安心させるために笑って見せた。
すると、その男の人は奇異な眼差しで僕を見て黙ってしまった。
「それよりも、そっちが大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」
男の人は声を裏返させて、それだけ言って逃げるように去っていった。
自転車も放置したまま。
僕は学校に行こうとしていたことを思い出して、腕時計を確認した。
今ので十数分が経過していた。
「やべっ!」
このままでは遅刻ギリギリになってしまうと思って走り出した。
と言っても、運動が苦手な僕はすぐに走るのをやめてしまった。
…………まあ、ギリギリであろうが間に合えば良いだろう。
いつも遅刻してないんだから、自転車に轢かれそうになった今日くらい良いじゃないかというやつだ。
僕はさっきの自転車の壊れ具合を思い出して身震いした。
…………一体何にぶつかってあんなすごいことになったんだろう?ってか、よく僕を避けきれたな。運転手は僕にぶつかったんだと勘違いしてたみたいだけど。ほんと、僕まで自転車みたいにぐしゃぐしゃにならなくて良かった~!
ぼんやりといろいろ考えているうちに、学校の方からチャイムが聞こえてきた。
遅刻確定の合図だ…………
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