第11話 呼び出し
翌朝も七海が起こしに来てくれて一緒に登校する。
途中で望に出会い3人と1匹で登校するが望は朝からハイテンションだった。
午前中の授業を睡魔と大バトルしながら何とか乗り越え。
昼休みに机に倒れこんで寝ていると今日は頬を突っつかれ、また雪菜だろうと思っていると耳元でカチカチと音がする。
「真琴、起きない。それじゃシャーペンで」
カチカチと言う音はシャーペンの芯を出す音だった。
恐ろしい事を言われた気がして慌てて起き上がると、雪菜が俺の目前に紙袋を突き出してきた。
紙袋を受け取り中を見ると綺麗に洗濯されビシッとアイロンがけされたワイシャツが入っていた。
「マコちゃん、それ何なの?」
「俺のワイシャツだよ」
「な、何でマコちゃんのワイシャツを雪菜ちゃんが持っているの? そう言えば一昨日、Tシャツで帰ってきたよね。ま、まさか」
俺が答えるより遥かに早く、そして的確にスルっと後ろから七海の腕が俺の首に巻きつきチョークスリーパーを極めやがった。
息が出来なくなり七海の腕を軽く叩いて、ギブアップのサインをすると更に力が込められる。
「不良に絡まれた時にブラウスが破けたから真琴がワイシャツを貸してくれた」
俺が堕ちる寸前で雪菜がワイシャツについて話すと七海の腕から力が抜けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ~死ぬかと思った」
「そう言えば思いだした、まだマコちゃんに聞いてなかった。どうして雪菜ちゃんが絡まれているのが判ったの?」
「俺に聞いているのか?」
「2人にだよ」
「テレパシー。でも真琴は素敵、ぽっ。一緒にご飯も食べた」
「ファミレスぐらいならいつでも連れて行ってやるよ」
雪菜が両手を頬に当てて電波的な事を平然と言って少し頬を赤らめた様に見えた。
見えたと言うのは、出会った時から思ったのだが雪菜は殆ど無表情で感情が判りづらい。
雪菜の説明で判ってもらえたのだろうと思って安心すると今度は雪菜が首を少し傾げて七海の顔を見ていた。
「そ、そうだよね。雪菜ちゃんとも仲良くなれたんだもんね。マコちゃんは優しいし、恋人って訳じゃないんだし、私みたいの嫌だよね。あれ、私なにを言っているんだろう」
そんな事を言いながら七海の目からはポロポロと大粒の涙が零れていて必死に両手で涙を拭っていた。
「どうしたんだ、七海。大丈夫か」
「ご、ゴメン」
「お前が謝る事じゃないだろ」
「で、でも」
クラスメイトも七海に気付きザワザワとし始めると教室のドアが勢い良く開き、同時にハイテンションな声が教室に響き渡った。
「頭に子猫を乗せて登校しながら抱き合うラブラブな、とてもプリティーな転校生はどこですかぁ? スクリームプリンセスに電波系美少女にフラッグを立て捲くったギャルゲーの主人公の様な転校生は……居た!」
嫌な言われ方だな。
前半の方は否定しないが後半の言葉には色々と問題があるんじゃないかなどと思いながらハイテンションな声がする方に視線を向ける。
少し赤みのかかったショートカットで失礼かもしれないが男前の女の子が首からカメラを提げて俺の事を指差していた。
「ああ、いきなりスクープか? 転校生のイケメンを巡る2人の不思議系美少女の争奪戦!」
そんな事を大声で言いながらいきなりカメラのレンズを向けてくる。
咄嗟に俺が手で顔を隠すと七海が慌てて教室を飛び出して行ってしまい。
追いかけようとするとハイテンション娘に腕を掴まれた。
「ちょい待ち、日向真琴君。私の用事が先だから」
「俺に何か用ですか?」
「自己紹介がまだだったね。私、新聞部で2年の野辺山美加って言います。ヨロシクね」
「その新聞部の野辺山先輩が俺に何の用ですか?」
今から七海を追いかけても見つけられないと思い諦めて椅子に腰を下ろした。
「うちの高校は転校生を取材して新聞で紹介するのが生徒会の指示で恒例になっているの。だから今日は取材の申し込みに来たの」
「その言い方だと拒否権は全く無いんですよね」
「凄い、その通り。生徒会公認だからね、放課後に新聞部に顔を出してね」
そういい残してハイテンション娘は教室を出て行き、雪菜も面食らったらしく俺の横で棒立ちになっている。
「雪菜、七海の行きそうな場所知らないか?」
「彼女はたぶんお姉さんの所」
「お姉さん?」
その時、午後の授業を知らせる予鈴が鳴ってしまった。
仕方なく授業の準備をし始め。結局、七海は放課後になっても教室には戻ってこなかった。
授業が終わり立ち上がろうとすると望が声を掛けてきた。
「真琴、これから駅前に遊びに行かないか?」
「あのな、昼休みの騒ぎを聞いていただろ」
「ああ、そうだったな。新聞部か気をつけろよ、あそこは生徒会の手先だから。特に生徒会長に睨まれたらお終いだぞ」
「やけに物騒な話だな」
「藤高は生徒会長に牛耳られているからな。不良達も生徒会には従っているくらいだからな」
「悪い、約束の時間だから」
「頑張って来い」
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