第4話 ロリコンの国のドードー鳥
「お、人影発見。」
昨晩に泳いだ分も含めて、40分くらいだろうか。のんびりと湖を平泳ぎで渡ると、数人分の人影が目に入った。その姿勢から察するに、岸に座っているらしい。
「やぁやぁ、長旅ご苦労。身体が乾くまで、俺と一緒にお茶でもどうだ?」
岸に座っていた少年は、俺たちの姿を見つけては、すぐ駆け寄り、伏木さんに手を伸ばした。少年のサイドには、かわいい、と呼ばれる部類の女の子が数人、キャァキャァと楽しそうに騒いでいる。
「お茶はいらない。ドライヤーのようなモノはある?」
伏木さんは手を取らず、自力で岸に這い上がる。
「せっかちなお嬢さんだ。俺の名はドードー。以後お見知りおきを。」
「そう。私は」
「アリスでしょう?伏木アリサ。その美しい身体つき、好みです。一枚写真を撮ってもよろしいかい?」
そう言って、ドードーと名乗る少年は、首からぶら下げた一眼レフカメラに手を伸ばす。
「いや、何やってんですか?」
「ん?写真を撮ろうとしたのだよ。何かが減る訳でもないし、いいであろう?」
よくないよ。
「秦くん、俺は男に興味ないのだ。そこをどいてくれるかい?写真に余計なモノが映ってしまう。」
その、写真撮るのをやめよう?
「おお!後ろに隠れたお嬢さん。こちらにおいで。写真を撮ってもよろしいかい?そうだ、俺の友だちを紹介しよう。今日から君の友だちにもなるのだからな。」
伏木さんのことは諦めたらしく、今度はマウスの手を引っ張って、ドードーは女の子の輪に行ってしまった。
マウスもたくさんの女の子に会えて嬉しそうだし、放っておいても大丈夫かな。
「伏木さんも、俺のことは気にせずに遊んでもいいんですよ?」
「ぜんぜん興味ない。」
そういうものですか。
「ところで君たち、これからどうするのかな?」
ドードーが一旦輪を抜けて、こちらに来た。
「あなたが狂人ではないのなら、私はすぐに立ち去るけれど?」
「そうか。ではお別れだね、マイプリンセス。道中には気を付けて。最後に1枚写真を―」
そこでドードーは言葉を止めた。伏木さんの眼が恐ろしかったので…なんて言うまでもないか。
「しばらく歩くと家があるさ。そこへ行くといい。」
「原作通りですと、白ウサギさんの家ですね!!ご主人様!あの有名な、物語序盤に出てくるウサギの家ですよ!!楽しみですね!」
「お、おう…。」
あの穴に入っていくウサギのことだろう。懐中時計をもった…あまり詳しくは知らないけれど。
「秦くん。」
ドードーが呼び止めた。
「彼女のようなロリ…じゃなかった、女の子と共に行動ができるなんて羨ましいよ。」
「はぁ。」
「大切にするのだよ。もちろん現実世界でも。常に目で追い、放課後は尾行を続け、何があっても彼女を守ってやってくれ。」
「それ不審者って言うんですよ?」
「絶対に。約束だ。」
俺の言葉は無視して、ドードーは再び輪に戻ってしまう。
「ご主人様、行きますよ!小娘ったら、全然待ってくれないんですから!ほら、早く!!」
エイプリルが高い声で俺を呼ぶ。
急ぎ足で二人に追いつき、ログハウスのような木の屋根が見えてくるまで歩いた。
この日の夢は、そこで終わった。
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