作戦会議

次の日、少年はまたはるちゃんの家の前にいた。昨日使わなかった百円で買った缶ジュースで首を冷やす。

死んだ人が帰ってくるのを確かめるって、どうするつもりなのか。また庭にまわろうとすると、玄関のドアが開いた。はるちゃんがひょこっと顔を出した。少年に向かって手招きをしている。

「玄関に入って、早く早く」

「うん」

ドアが後ろでガチャリと閉まった。

はるちゃんの家はすごく暑かった。クーラーはついてないし、そもそも窓が開いていないのか風すら入ってこない。

「これ飲む?」

「じゃあ、半分飲んだら私に頂戴」

少年は少しドキッとして、でも言う通りにすることにした。

「それ、長袖で暑くないの?僕、半袖でもこんなに暑いのに」

「いいの。それよりほら、作戦会議しようよ」

はるちゃんはそう言っておきながら、もう全部自分で考えているようだった。半分飲んだ缶を隣に置いても、それに目もくれずに話し始めた。

「名付けて、夏の大冒険。他の子が誰もやったことが無いことを、私たちでやるの」

「うん」

「みんなは空き地に虫採りに行ったり、海でスイカ割りしたことを宿題の絵日記にするでしょ?私たちはそんなんじゃない」

はるちゃんの額から汗が流れ落ちる。少年は普段全く見ない必死な姿に圧倒されていた。

「まだ誰も見たことがない場所に行こうよ。あの世を見に行こう。あの世に行って帰って来るの。未知への冒険だよ」

「それって」

「二人だけの冒険、今なら絶対に帰って来られるから」

はるちゃんが立ち上がった。缶を拾って一気に飲み干し、少年の手を引いてドアを開ける。

「今から川に行こう、きっとこれまでで最高の日になるよ」

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