第7話 大事な事聞こえていない辺り難聴系です

 仕方ない、女子テニス部が終わるの待つか……。

 つっても、あと一時間以上あるんですがそれは。

「まあ練習風景眺めて過ごすか……」

 それから俺は女子ばっか見てて、変な言いがかり付けられたら困るので、男子の方も見る事にした。

 俺だってそこそこの実力者。練習の善し悪しくらいは分かる。

 ……多分。


            *


 三十分後。

「あいっつら、やる気あんのかああああ!!!!」

 一人絶叫していた。

 なんだあの練習、ダラダラヘラヘラと!

 今すぐ飛び出して全員並べて説教してやりたいところだ!

「ハッ!?つい熱くなってしまった……」

 この俺にテニスを再熱させるとは、やるじゃないか男子テニス部。

「案外、めぐるが言っていた事も事実なのかもしれんな……」

 女の子はべらせてるだけのリア充。

 あいつらがどれだけテニス下手くそだろうと、女の子は寄ってくる。

 だってイケメンだもん、しょうがないね!

「それにしても、女子テニスの方は意識が違うな……」

 一部の女子は男子のイケメン共にふらふら寄っているが、結構の人数は一生懸命打ち込んでいた。

 特に夏菜は、一際違っていた。

「元々は俺が誘ったのになぁ」

 俺が勝手に辞めて尚、あいつはあれだけ本気で打ち込んでいるんだなぁ。

 案外、俺が誘わなくてもいつか自分で始めていたのかもしれない。

「そっか、俺、自分で誘っておいて勝手に辞めてたんだな……」

 それは確かに怒るのも無理ないかもなぁ……。

 しかも新しく始めた事はエロゲである。

「……本当、怒るのは無理ないな」

 俺よく考えたらクズじゃん。

「土下座で許してもらえるかな」

 ズボン汚れるからあまりしたくないなぁ……。

 自分に非があるのに、土下座を抵抗するクズの極みである。

 そんな事を考えていると、テニス部は片付けを始めていた。

「よし、そんじゃそろそろ行くか」

 行くぞ俺、土下座の覚悟は十分か。


            *


「よ、夏菜」

「布良先輩……、どうかしたんですか?」

 あれから十分ちょっと。部室棟近くで待っていると、夏菜は来た。

「いや何だ、たまには一緒に帰ろうかなって思ってな」

「はぁ?急にどうしたんですか?嫌ですよ」

「えー、家近いんだし良いじゃんかよー」

「そういう問題じゃないんですよ……」

 むう、やっぱり噂になるのとかが嫌なのかな?

「――せの臭いとか――たら嫌だし……」

「ん、どうかしたのか?」

 なんか呟いてるみたいなので近づいてみる。

「え?うわあああ、寄るな馬鹿あああ!!」

「へぶらっ!?」

 顔を思い切りやられた、グーで。

 いや、そこは可愛くビンタとかだろ、なんでグー!?

 まあでも――

「いやー、嬉しいな」

「は、何ですか?殴られて喜ぶとかMなんですか?」

「違えよ」

 俺に痛みを快感に返るエコ機能は付いていない。

「そうじゃなくってさ、一瞬とはいえ、タメ口で喋ってくれたからさ」

「え、あ……。……ふん」

 言われて気がついたのか、顔を背ける夏菜。

 よし、雰囲気も上々だ、今なら土下座で許して貰えるな!

 そう思った俺は本題を切り出そうと――

「いやー、今日も疲れたなー」

 したところでイケメンリア充共が着替え終わって出てくる。タイミング悪いなー。

 まあいいや、よし。

「なあ夏菜――、あれ?」

 そこに夏菜の姿は無かった。

「え、何?帰った!?そんなに俺と帰るの嫌!?」

 俺はMじゃないから普通に傷つきますよ!?

 悪戯か何かは知らないけど、カムバーーック夏菜あああ!!


            *


 結局周り見渡してもどこにもいなかったので、一人でとぼとぼと校門へと向かう。

「畜生、あぁんまりだあぁぁぁ」

 別に泣いてはいないが、結構ショック。

 挙げ句の果てに――

「イケメンと話してるしな」

 そう、いなくなったと思っていた夏菜は、校門でイケメンのテニス部部長と話していた。

 くっそう、やっぱ顔か、顔なのか!

「あれ、でも……」

 何か雰囲気悪げ?てか夏菜めっちゃキレてない?

 あ、つか行っちゃった。

 ひょっとしてあのリア充がただ言い寄っていただけ?

 なーんだ、それなら安心、帰りましょー。

「くそ、あの女、ちょっと可愛いからって調子乗りやがって……。明日、ちょっと痛い目見せてやるか」

 なーにが安心だ、この部長、新世界の神ばりに悪い顔しながら、とんでもねー事小声で呟いてんぞ。

 あ、てか、小声聞こえたって事は、俺難聴系主人公じゃ無いぞ!

 

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