第6話 私はあくまで親友ポジAなのだよ

 放課後、俺はグラウンドで部活に励む奴らをボーっと眺めていた。

 正確に言えば、一人しか見てないんだけどね。

(夏菜……)

 視線の先にはテニスをやっている夏菜。

「俺にも、あんな時期があったんだなぁ……」

 それが今ではさっさと家に帰ってエロゲ三昧。

 じゃあ何で残ってこんなことをしているのかといえば――

「おーす、お待たせーカズ」

「遅いぞー、めぐる」

 委員会で残っていためぐるを待っていたのである。

「んー、何々、待ってる間に可愛い子探し?」

「おっさんかよ」

 女子高生の思考とは思えないな。

「じゃーあれだ、朝のあの子、見てたとか」

「……」

 「当たりだろ?」と言わんばかりのドヤ顔を見せるめぐる。

「ムカつくな、めぐるの癖に」

「何それひっどい」

「だって、お前普段何も考えてなさそうなのに、何でそんな察し良いんだよ」

 普段は口を開けばエロゲエロゲエロゲエロゲ。

 俺かよ。

「ええー、私だって一応、いろいろ考えながら生きているよー。例えばね――」

「……!!」

 何だろう、今のめぐる、これまでの感じとは違うな……

 もしかしなくても、本当に深い考えがあって、今までアホを演じていたと――

「帰ってエロゲしたいなとか、あの新作買うためにお金のやり繰りどうしようかなとか」

 一瞬でも思った俺がアホだったのかもしれない。

「――――、とか」

「ん、最後なんて言ったんだ?」

 最後に小声で何か言っていた気がしたが。

「あー、聞こえなかったなら別にいいよ、こーのラノベ主人公!」

「少し聞き取れなかっただけで難聴認定!?」

 背中をバシバシと叩いてくるめぐる。

 その笑顔は楽しそうで、笑顔が可愛くて――

「――――っ!」

「ん、どったの変な顔して?」

「い、いや、何でもないんだ!」

「そう?」

 いかんいかん、不覚にもめぐるの事が可愛く見えてしまった。

「俺、疲れているのかな……」

「……なんかよくわかんないけど、私馬鹿にされてない?」

「そんな訳ないだろ。ほら、帰ろうぜ?」

 しかし、めぐるは申し訳なさそうな顔で、

「あー、ごめん。今日私カズと帰りたくない気分なんだわ」

「え、何それ!?」

 俺と帰りたく無い気分って何だ!?

「というわけで、今日は一人で帰るか、一緒に帰れば?」

「はぁ……、そういう事かよ」

 仲直りしろって事か?

 やっぱりこいつは、こいつなりに色々考えて生きているのかもしれない。

「そんじゃ、また明日なー!」

「ああ、じゃあな。」

 めぐるに別れを告げてから再びグラウンドを眺める。

「まあ、家近所だし、了承くらいはしてくれるかな……」

 別に、幼馴染みが一緒に帰るくらい普通だろ。

『朝の子もショートだったよね?』

 まさか、それで気を利かせたとか?

「馬鹿かよあいつ、俺と夏菜はだっつーの」

 第一、向こうにだってそんな気は無いだろ。


            *


 一方その頃。

 ああ、カズの奴これからどうするんだろうなぁ。

 ちゃんと幼馴染みちゃんと、仲良くできたら良いんだけどね……

 まあ、お邪魔虫はさっさと帰るとしますか。

 

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