第3話 当然さ、変態紳士としてはね

 あれからコーヒーが来るまで、俺はただ目の前で行われる美少女二人の談笑を眺めることくらいしかすることがなかった。

 コーヒー来てからもそれしかできなかったわ、だって俺頼めなかったし。

 でもまあ、こうやって見てみると俺の知ってる夏菜って感じがした。

 明るく、笑顔が素敵で、可愛い女のだ。

 うーん、しかしよく考えてみると、この光景を拝めるのなら2200円(税込)も高くはないかもしれんな。

「あ、あの布良くん?そんなに見られると恥ずかしいのですが……」

「先輩、気持ち悪いです」

 おっと、露骨に見すぎたか。まあ紳士なら失礼にならない程度に鑑賞すべきだったな、失敬失敬。

「なんかくだらないこと考えてる顔してますね……、本当に奢らせますよ?」

 くだらないこととは失礼な――って

「へ、俺が奢るんじゃなかったの?」

「何言ってるんですか、冗談に決まってるじゃないですか。そういうところは全く変わらないんですね」

 そう言って悪戯っぽく微笑む夏菜。今日会ってから初めて俺に向かって見せた笑顔だった。

 そういうお前も、悪戯好きな所も、その笑顔も、変わってないな……。

 でも悪戯に1500円も使うか、普通?

 少しだけ懐かしい気持ちに浸っていると二人とも席を立つ準備を始める。どうやら飲み終わったらしい。

「さて、それじゃあそろそろ行きましょうか」

「そうですね、真白先輩!」

 しかし、本当によく懐いてるなぁ、尻尾振る犬みたいだ。

「ところでずっと気になってたんですけど、星鳴さん、さっきお金もうほとんど無いって言ってませんでしたっけ?」

「「え?」」

 思わずハモる俺と夏菜。

 慌てて財布の中身を確認する夏菜。ちなみに俺はもうこのあと起こるであろうことを想定して財布から金を用意していた。

「えっと……布良先輩……」

 俺は無言で代金を差し出したのであった。

 ちょくちょく悪戯に失敗するのも変わらないな、夏菜……。

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