第33話
夜の闇が訪れると、満天の星空が現れた。
ネル「星って、こんなにあるんだね。すごいね」
釈「ああ、どこかの星にぼくたちと似たような生物の住む星があるんだろうね」
ネル「私も生物?」
釈「ははは。アンドロイドだって、心があるんだから生物だよね」
ネル「でも、もうすぐサヨナラ」
釈「ネル・・・君と別れたくない」
ネル「私も」
しばらく、二人は海と星空を眺めていた。
ネル「あっ、流れ星!」
釈「ああ、見えた」
ネル「願い事3回言った?」
釈「無理だよ」
ネル「私、言ったよ」
釈「なあに?」
ネル「コウちゃんが、私と別れても幸せになりますように」
釈「そんなに長いの、言えるわけないだろ」
ネル「言ったもん」
釈「ありがと」
どのくらい時間がたっただろうか。
釈「そろそろ、行こうか」
ネル「うん」
二人は駐車場に戻り、レンタカーに乗り、島内のホテルに向かった。
二人で過ごす最後の夜だった。
釈は、朝まで何度も何度もネルを抱きしめた。
翌日は、島内を見て回った。
あっという間に時間が過ぎていった。
秋の日は釣瓶落としというが、船に乗る時間が来てしまった。
長崎空港に戻り、羽田空港へ夜のフライトになった。
ネル「あっという間だったね」
釈「まだ別れるなんて信じられない」
二人は機内でもずっと手を握り続けた。
羽田空港に着くと、アンドロイド処分会社の男が待ち構えていた。
男「釈さんですか?」
釈「はい」
男「お待ちしておりました。こちらが、アンドロイドの方ですか?」
釈は、頷いた。
男「では、サインをお願いします」
釈のサインをする手が震えていた。
ネル「じゃあ、ここで本当にサヨナラ」
釈「ネル、高校生のとき、もし私が死んだらって訊いたよね。ぼくがなんていったか、覚えてる?」
ネル「ねると同じ顔のアンドロイドでも作るかなって言った」
釈「やっぱり、覚えてるんだ」
ネル「本当にそうなったんだね」
釈「あのとき、あんなこと言わなかったら、こんなに辛い別れを二度も経験しなくてすんだのに」
ネル「でも2回も会えた」
釈「ありがとう」
ネル「コウちゃん、楽しかったよ。バイバイ」
釈「ネル」
二人は、最後の口づけを交わした。
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