第31話 長崎の旅
釈とネルは、朝早く羽田空港を飛び立った。
「離陸のときは、何度乗っても緊張する」と、釈は言った。
「コウさんと最後の思い出作りになるんだね」と、ネルは笑った。
長崎空港まで約2時間のフライトである。
二人は時間を惜しむように手をつないだ。
「見て!雲が下に見えるよ!ふしぎ~」
ネルは子供のようにはしゃいだ。
ネル「着いたね」
釈「はあ、落ちなくてほっとした」
二人は、長崎市内へと向かった。
もう一つの目的は原爆資料館である。
ネルは絶句した。そして、涙ぐんだ。
101年前に、広島と長崎に原子爆弾が落とされたのである。
1945年8月6日、広島にウラン型原子爆弾リトルボーイが投下され、その年のうちに約14万人が亡くなった。
続けて8月9日、長崎にプルトニウム型原子爆弾ファットマンが投下され、その年のうちに約7万人が亡くなった。
2046年、世界は連合政府となり、戦争はなくなったかに見えているが、実際は核兵器はなくなっていない。
二人は心から戦争のない世界を願った。
例年にない寒さで、11月の平和公園は枯れ葉が舞っていた。
二人は長崎市内をあとにして、五島列島を目指した。
長崎空港から福江空港まで飛行機で移動すると約30分で着くが、釈は基本的に飛行機が苦手なので、船にした。
五島列島へ渡るには、フェリーとジェット・フォイルという高速船の2種類の船がある。
港の案内人によると、フェリーは船酔いしやすいというので、ジェット船に乗った。90分で着いた。
五島で最大の福江島に着き、九州本土では最西端に位置し最後に夕日が沈むという大瀬崎灯台に行った。
もうすでに、夕日が沈むところだった。360度見渡すところ海に沈みゆく夕日を眺めながら、ネルは静かに語り始めた。
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