第24話 武装兵に監視された授業

釈は、車で門に入ろうとして武装兵に止められた。車から降りるよう言われ、ボディ―チェックを受けた。


そのとき、歩いて入ってくる数人の学生たちが武装兵に抵抗した。

「やめろよ!触るんじゃねえよ!」と一人の学生が言った瞬間、崩れ落ちた。

激しい電気ショックを与える機械が使われたようだ。

女子学生が悲鳴を上げた。倒れた学生は絶命したようだ。


武装兵のリーダーらしきアンドロイドが叫んだ。

「おとなしくしないと、生きて帰れないぞ!」

他の学生たちは、おずおずとキャンパスへ入っていった。


研究室へ入ると、すぐに助手の山本彩がノックし、入ってきた。

「先生、たいへんなことになりましたね」

「そうですね」

「うちのお父ちゃん、今朝の会見を見て首をかしげてました」

「うちのネルも、いつも通りでいいよと、言ってくれました」

「アンドロイドたちも戸惑っているんでしょうね」


研究室のモニターが映り、学長から緊急の呼び出しを受けた。

大会議室で、教職員一同が集められた。


「先生方、職員の皆さん、緊急にお集まりいただき、ありがとうございます。

もうすでに、総理の会見、出勤途中の街の様子、アンドロイドの方々のご様子をご覧になって、事態はおわかりだと思います。

 一人の学生が抵抗し、殺害されました。どうか、皆さん、アンドロイドの方々には逆らわないように気をつけてください。各教室にはすでに兵士の方々が配備されています。二講目から授業がある方は、授業内容に配慮しつつ学生たちを刺激しないよう、お願いします。

 もう一つ、お給料はすべて政府の管理になります。皆さんの生活は保障されますが、資産は州政府のものになります。決して抵抗をなさらぬようお願いします」


教職員席からどよめきが起こった。その瞬間、会議室の壁際を取り囲んでいた武装兵たちがいっせいに銃を向けた。教員たちは、すぐに静まり返った。

学長は慎重に言葉を選びながら緊急会議は終わった。


この日の講義は、アンドロイドと人類の未来について、宇宙開発や環境保護など、明るいものを考察する内容だったが、武装兵の監視つきで、「アンドロイド様」と敬称をつけながら話すことに苦労した。


精神的にぐったりとしながら、釈は帰宅した。

ネルは、いつにもましてご馳走を用意してくれていた。今日は仕事を休んだという。

「コウさん、何も心配いらないのよ」

ネルの方から、釈の胸元に顔をうずめていた。

(やっぱり、ネルがいとおしい)

釈は、ネルを抱きしめた。

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