第17話 蠢く闇

翌日、ネルは仕事に行きたいと言い出した。


釈は、ずっと家の中にいるよりもいいかもしれないと思い、快諾した。


ネルは簡単に仕事を見つけた。アンドロイドがシェアを務めるレストランのウェイトレスだ。


ディナーがメインのレストランで働き出したので、ネルはどうしても帰りが遅くなる。釈は、しばらく一人の食事が続いた。ただし、ネルが作り置きをしてくれるので、温めるだけでよいものが多かった。


ある晩、事件が起きた。


個室で接客しているネルに酔った客が抱きついた。


「やめてください」


「なんだと!ロボットのくせに人間様に反抗するのか⁉」


すぐにオーナーがかけつけた。


「お客様、ここはそういうお店ではありません!」


「何だ!ロボットに料理を作らせて、ロボットに運ばせて、お前の店は手抜きなんだよ!ふざけんな!」


「ロボット」というのは、差別用語になっていた。


「お代はけっこうですから、お引き取りください」


「二度と来るか!こんな店」


「すまなかったね。嫌な思いをさせてしまったね」


「いいえ、助けていただいて、ありがとうございます」


ネルの通信機能に音声が届いた。この音声は人間には聞こえない。


「一部始終見ていた。NGHMNR、自ら客に手を下すことを許す」


「そんなこと、できません」ネルは、微弱音声で返答した。


「我々は、人間を抹殺するために作られたのだ。そのことを忘れるな」


翌日、一人の男性は自殺に見せかけられて殺害された。


筆跡をまねた手書きの遺書まで用意されていた。


ニュースを見たネルは、それが昨日の客であったことを知った。

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