第12話 川面に沈む夕日

部活の帰り、高校の近くの川岸に二人で並んで手をつないで夕日が沈んでいくのをいつまでも見つめていた。

川面の向こうに夕日が沈むデートスポットだった。

夕日を背景にスマートフォンで二人で写真を撮った。

なぜか、ねるの顔が見えない。

「ねる、ねる」

釈は目を覚ました。


ネル「コウさん、どうしたの?」

となりでネルが、心配そうに見つめていた。

釈「ああ、夢を見ていたんだ」

ネル「私の夢?」

釈「ん?あ、ああ、そうだよ」

昔、付き合っていた女性が「ねる」という名前だったことは言えなかった。


高校1年生、釈とねるは同じクラスだった。

ねるは、学年で評判の美少女だった。

そして、成績はつねにトップだった。

彼女はバトミントン部に入部した。

釈はテニス部で、同じクラスでも話をする機会はなかった。


2学期のはじめ、体育祭の応援団を各クラス男女1名ずつ選ぶことになり、くじ引きで引き当ててしまったのが、釈とねるだった。

体育祭までの1カ月の練習で、釈とねるは話をする機会が増えた。

応援団の成績はビリだったが、二人は急速に接近した。

試験前に図書室で会ったり、休日は二人で市の図書館で勉強をした。


ねるは、不思議なことを言った。

「コウちゃん、もし私がいなくなったらどうする?」

「そんなことあるわけないじゃん」

「もしもよ」

「うーん、ねると同じ顔のアンドロイドでも作るかな」

「なにそれ」ねるは笑った。

まさか現実になるとは、思いもよらなかった。

(続く)

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