第2話 商人さんは優しいっぽいです

「記憶がないって、どの程度記憶がないんだ?」

商人は気遣ってか興味本位か分からないが聞いてくる。

「どの程度っていうか…ここがどこなのか、とか、分からないことが分からないっていうか……」

「そうか、それは大変だな。名前は分かるのか?」

「名前は淀川 ユウです」

「ヨドカワユウ……あまり聞かない名前だな」

やっぱりそうだよな。日本人の名前は基本的に外国人には分かりにくい。異世界ならなおさら、といったところか。

「とりあえず、この問題はあまり詮索しない方が良いみたいだな」

この商人結構察しがよい。どうやら何から手を付けたらいいのかも分からない俺の心がちゃんと分かっているようだった。

「この国はレーリッシュと言って、島国なんだ。通貨はリッシュゴールド、まあ実物を見た方が早いかもしれない」

そう言うと、商人は腰にあった袋からお金を取り出した。

金貨である。金貨には大きく1と彫られており、多分1リッシュゴールドなのだろう。価値は分からないが。

「とりあえず、この国ではこれを稼ぐことでしか生きていけないな。例外はあるが」

なるほど。確かにその通りである。お金を稼ぐのが最優先なのは間違いないだろうな。

「まあ、とはいっても記憶をなくしてるってことは、稼ぐ方法も分からないだろう?当分の間は俺が養ってやるよ」

え、養ってあげるってどういうこと?見ず知らずの人に!?

「とは言っても、タダで養ってやるわけじゃないし、稼ぎ方とかも学ばないとな」

うん。安心した。向こうは働き手が増える。こっちは面倒を見てもらえる。

割と悪い条件ではなさそうだし、そもそもここでノーは選択しないだろう。

「はい、よろしくお願いします」

僕がそういうと、商人も笑顔で返してくれた。

「よろしくな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る