2019/4/16 「ジャンクPC」

 先程までいた山手線のホームを経由して電気街口へと向かう。

 何回か来ても不思議な構造をしてるなと思うが、秋葉原駅がこういう作りをしているのだから仕方がない。

 再開発され綺麗に整備された駅前ロータリーを抜けると、計6車線の大通り、中央通りへ。

 新宿や池袋、ほか臨海部が落ち着いた色味の建物・・・ほぼ高層のオフィスビルだけど・・・ばかりの東京都内では珍しく、原色ベースや大きくアニメキャラが描かれた広告看板、今季のアニメの番宣や広告が流れる大型ディスプレイ、派手な色に塗られた建物等々で装飾された派手な街並みに迎えられる。

 都内のヘリ空撮動画とか見ると地面に地名や境界線が書いてあるわけでもないのに、極彩色の町並みですぐに秋葉原だとわかるのがすごい。渋谷でもここまで派手じゃなかった。

 深い緑色の総武線の高架下の横断歩道を渡り、もう一本奥の細い路地に入る。

 怪しげな電子機器や海賊版のソフトウェア・・・が売られていたらしいが、それはもうはるか昔の話。

 国際郵便の配送車や軽バンが人々の間を縫うように行き交う細い路地だが、道の両脇には大手家電量販店やアジア系の有名PCメーカー、全国チェーンの中古スマホ販売店等の小奇麗な店舗も結構な数軒を連ねている。

 客引きのメイドさんにスルーされ、自分の今着ている制服に場違い感を感じながら、交差する大通りの信号のない横断歩道をわたり、路地を進んでいく。

 駅から離れていくに連れてだんだんとマイナーなチェーン店や個人経営であろうお店が増えてくる。

 個人経営に見えてじつは有名店舗の子会社とかでもあんまり驚かないけれど。

 まるで倉庫で直接商売を行っているような、薄暗いお店に覚悟を決めて入った。

 夕方とはいえ、平日の真ん中ということもあって店は空いているようだった。

 メインPCではあの画像ファイルを扱う訳にはいかない。マルウェアにPCが感染してしまうから。

 そこでマルウェアに感染されてもあまりぼくが困らない、加えておそらく感染しないような仕掛けをしたPCを用意しようと思った。

 新品も保証がついたまともな中古PCも買うお金なんかないけれど、どこかの誰かが使っていた素性が謎の動作保証のない、ジャンクPCならギリギリ予算内に収められる。

 これにフリーのOSを入れれば、性能は数年前から10年近く前のものになるが実用には耐えうるだろうと判断した。

 業務用のコンテナボックスに粗雑に大量に押し込まれたノートPCの中から比較的状態が良好そうなものを探す。

 天板にはられた値段シールと、パームレストにはられたCPUのステッカー、キーボードのキーに欠損がないかを確認して、何台かのPCを壁際に設けられた動作確認コーナーへと持っていった。

 

 

 

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