2019/04/15「問い合わせフォーム」
入学祝に買ってもらったPCは、そこそこ性能が良いものをおばあちゃんにねだったかいがあってか数十秒でOSが起動しパスワード入力画面が表示される。
制服の袖をハンガーに通しながらパスワードを入力すると、すぐに散らかったデスクトップが表示された。
整理しないと、とはいつも思ってるんだけどね・・・
ブラウザを起動し、URLバーに「miracle-buy.com.my」と打ち込む。
「Dear person in charge in Miracle Buy.
I am Yuya Minakami, a student in Japan. I'd like ask you~」
辞書を引きながらつたない英語で問い合わせ内容を書いていった。
一段落ついたとき、何気なくF12キーを押し、ブラウザの開発者ツールで問い合わせフォームのページのソースを開いた。
WebサイトというものはHTMLというマークアップ言語で記述されている。ここに表示したい文字などの他、読み込みたい画像や動画、文字や表題のデザインが記載されたCSSというファイル、ほかにブラウザ上で動くJavascriptファイルなどを記載していくことで、Webサイトというものは作られる。
フォームもこのHTMLでどういう入力項目のフォームにしたいのか、そして送信ボタンが押されたときに入力された内容を送信するサーバーを指定する。
そして、WebブラウザというものはこのHTMLファイルをサーバーから受信し、ぼくたちが普段見るWebサイトの画面を生成する。だから画面を作るもとになったHTMLファイルを持っているので、表示しようと思えばテキストファイルの状態で表示することができる。
大抵のブラウザではF12ボタンを押せば表示できるから興味があったら試してみてほしい。
ミラクルバイの場合、古そうなサイトのデザインから予想していたとおり、そのファイルはかなりシンプルなもの。
そのなかでフォームを表示するために記載する必要がある部分を見つけた。
<form method="POST" action="http://q209tpghp0y2grheptha009uq.net">
「えっ?」
ミラクルバイの問い合わせフォームには、不審なサーバーのURLが設定されていた。
「ひょっとしてこのフォーム、改竄されてる・・・?」
僕は慌てて入力した問い合わせ内容をフォームから切り取って消し、けれどなんかもったいないのでテキストファイルにしてデスクトップに保存した。
よく考えてみれば、基本的にサーバーからHTMLファイルなどを受信するときとフォームの送信ボタンを押したときにしかサーバーと通信することは無いので、この行為に全く意味はないのだけれど。
駅前で日本人の個人情報を収集する怪しい外国人たち、明らかに日本進出なんて検討していない上に改竄された疑いのあるその外国人が騙っていた企業のネットショップ。
「面白そう」
滑り止めでいまの学校へ入学してからこれまでただ惰性で学生生活を送ってきた。
そんななか、ラノベやアニメの設定でしかなかったアンダーグラウンドの世界の一端が目の前ではためいている。
一体誰が何をやろうとしているのだろうか。
主人公たちのようにスマートに真相を暴くことができるとは思わない。ただの中学生である僕にそもそもこの真相を突き止めるなんてことができるのかどうかもわからない。実はなんにも起こっていないのに僕がとんでもない思い違いをしているだけなのかもしれない。
けれど、好奇心を抑えるのはちょっと難しかった。
手がかりはもうこのWebサイトしかない。
「ハッキングしてみよう」
それで何か手がかりがつかめるかもしれない。そもそも現状で僕ができそうなことってそれしか無い。
ちなみに、さっき買った雑誌に載っていた、Webサイトハッキングの記事を読んだら自分でもできそうで、実際に試してみたくなったから、というのがまったくなかったとは断言できない。
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