進物
「
「なんじゃ」
「
「進物? 違うであろう。いつもの嫌がらせであろうて」
「嫌がらせにしては大層な……」
「それはそうよ。貧乏姫に己の富をひけらかすのが、あやつの趣向じゃ。ほんに嫌味なやつよの」
楓姫の下男が、
「素晴らしい
あやつがそんな
「
「あ……」
「埋め草は、
梓が、くたりと首を垂れた。
「実海棠は傷むとよく匂うからのう。鼻で食せと言うことよ」
「ここまでひどく当たられると……」
「なに。愚か者は捨て置けば良い。刻んで
口角を上げた梓が、ごくりと喉を鳴らした。
「では早速」
箱の中に手を入れて比較的傷みの少ない実を取り出した梓は、いそいそと台所に向かった。
「大儀じゃが仕方あるまい。どれ、返歌を書くか」
礼など返したくはないが、返さぬと後で何を吹聴されるか分からぬからの。
茜さすまろき実既に
【 了 】
+++++++++
自主企画、『セルフ三題噺『風薫り我想う』』参加作品。
見出し:こんな進物は要らないんですが……
紹介文:貧乏な伊佐姫のところに、金持ちの楓姫からとんでもない進物が。でも、神経ワイヤーロープの伊佐姫は動じません。
富小路とみころさんの自主企画『セルフ三題噺』のお題D(『栗』『笑い』『落ち葉』)、お題F(『りんご』『香り』『新米』)を最難度レベル4で。レベル4の条件は……。
・単語を使わず表現する
・二つのお題で一つのお話を組み上げる
・『風薫り我想う』『秋の宵』のどちらか(両方)を最後に入れる
・文字数を1000 or 500、ぴったりにする
・エロ・グロ(ホラー)要素を使わない
……です。
最後の短歌は、当然ダブルミーニングになっています。表面的には、もう食べちゃった、ごっそさん……なんですが、もちろんそんな生易しい返事じゃありません。
『あんたがどんなに嫌味を投げつけたって、わたしはそれを空っぽに出来るの。おいしいところだけ食べて、あとは秋の夜空の向こうにポイよん』
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