第7話「盗塁」
グアームド軍が一斉に矢を放ってくる。
「お前ら、何とか耐えるんだ!!」
ジュテームの重騎兵たちは、盾を構え、それを迎え入れる。無数の矢が降り注ぐが、そのほとんどが堅牢な盾によって防がれていく。
「無駄な抵抗を! 矢は一方向だけではないぞ! 風魔法だ!」
アタカイの指示で風魔法が一斉に唱えられ、強い風が戦場に吹き荒れる。
放たれた矢が風にのり、次々と方向を変えながら、ジュテーム軍に襲いかかる。
流石に盾と鎧だけでは防ぎきれず、何人かが矢の被害を受ける。
「もう少しだ! ここが踏ん張りどころだぞ!!」
俺も盾を構えながら、発破をかける。
その瞬間、ラーダル率いる光魔法使いたちが詠唱を終える。
突如、グアームド軍の後ろにジュテーム軍の重騎兵100騎が現れる!
彼らは、大地が揺れるような大声を上げ、グアームド軍を後方から攻め立てる。
俺は、小さくガッツポーズをする。
「よし、しっかり盗んだな!」
盗塁。それは、野球における塁を盗む進塁方法である。ランナーが塁にいるとき、ピッチャーが投げるモーション、感覚、癖を見抜き、次の塁へ走るのだ。
本来ピッチャーはバッターとの対戦に意識を割くものである。しかし、ランナーが塁にいる場合、そのランナーに走られないように、常にランナーも意識していなければならない。
とはいえ、バッターへとボールを投げなければ試合が進まない。その投げる瞬間、ランナーから目を切る一瞬をねらって行われるのが、盗塁である。
当然、投げる前に走って気づかれてしまえば、ピッチャーがその塁に投げて(牽制)、アウトになってしまう。逆に投げ終わったのを見届けてから走っても、ボールをとったキャッチャーがすぐに塁に投げてアウトになる。
投手の癖を見抜き、投げる瞬間、ランナーから目を切った瞬間にスタートを切らなければ、塁を盗むことはできないのだ。
俺は、200騎の重騎兵のうち、100騎は国境から見えない岩場の陰に待機させておいた。
そして、グアームド軍が残り100騎の重騎兵との対戦に意識を割いている間に、ラーダル率いる光魔法使いたちが、一斉に転移魔法を唱える。
100騎の重騎兵を転移させるのには、ある程度の時間と人数を要するらしい。
そこで、俺たちがグアームド軍の意識を集め続けた。
そして、転移魔法でグアームド軍の後方に、100騎の待機させていた重騎兵を転移させる。
転移された重騎兵たちが、グアームド軍に襲いかかる。重騎兵は、接近戦において無類の強さを発揮する。ましてや、後ろからの奇襲だ。ひとたまりも無いはずだ。
後ろからの襲撃でグアームド軍の矢の攻撃が止む。
先程まで降り続けていた矢の雨は止み、勝利の光明が差し込んだ。
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