第6話「降伏勧告返し」



 司令室から外に出て、国境付近に目を凝らす。

 そこには、およそ300程の騎馬隊の姿が確認できた。


「300ぐらいいるな……、今動かせるジュテームの騎馬隊はどのくらいいる?」


 司令室に敵襲を伝えにきた兵士が答える。


「おそらく、今すぐだと200前後になるかと……」


 200か、かなり厳しい防衛戦になるな……!


「今すぐ動ける騎馬隊を100騎、国境付近に設置してくれ!あと、兵士長たちを一旦ここに集めてくれ!」




 俺は馬になんて乗ったことがないので、ラーダルの乗る馬の後ろに乗せてもらっていた。


 本来、馬の二人乗りをする場合、手綱を握る方が後ろに乗らなければいけない。しかし、ラーダルは俺よりも小さいため、ラーダルが後ろに乗ってしまうと、俺の後頭部で前が見えなくなってしまうのだ。

 そのため、俺は今振り落とされないようにラーダルにしがみついていた。


「頼む、ラーダル!少し速度を落としてくれないか!このままじゃ振り落とされる!」


「何を言ってるんですか!時間がないんですよ!」


 何とかラーダルにしがみつきながら、国境付近に

辿り着く。



 既に、ジュテーム軍の騎馬隊が集まっていた。


「遅いぞ、指揮官!もう既にグアームド軍は国境まで来ているぞ!」


 先ほど兵舎で真っ先に声を上げた兵士だ。名をガイダルというらしい。


 ガイダルに言われ、国境を見ると、弓をこちらに構えたグアームド軍の軽騎兵たちが目に入る。

 軽騎兵の先頭にいるちょび髭を生やした男が、こちらに呼びかける。


「ジュテーム軍よ、よく聞け!我々グアームド軍は、お前たちに降伏勧告をする。もし受け入れるならば、5分以内に武器を放棄し、白旗を掲げよ!これを受け入れないならば、敵対宣言とみなし、攻撃を開始する!」


「あの野郎、好き勝手言いやがって!大体、勝手に国境越えてこようとしてんのも、てめえらだろうが!」


 ガイダルが苛立ちをあらわにする。


「タツヤ!どうするの?まさか降伏しないよね?」


 ラーダルが心配そうに俺の顔を覗く。


 まさか?試合前に白旗をあげるやつがどこにいる?


 俺は、ラーダルに乗せてもらっていた馬から降り、ジュテーム軍の先頭に立つ。そして、グアームド軍に向けて高らかに宣言する。


「グアームド軍よ、よく聞け!我々ジュテーム軍は、お前たちに降伏勧告をする。もし受け入れるならば、5分以内に武器を放棄し、白旗を掲げよ!これを受け入れないならば、敵対宣言とみなし、攻撃を開始する!」


 それを聞いたグアームド軍のちょび髭の男は、顔を真っ赤にして激昂した。


「あの若造、舐めた真似をしやがって!!それに、あの顔つきはジパングの原住民だな?差し詰め、ジュテームが転移させた異世界人だろう。いい機会だ!首をとって、引き摺り回してやる!」


 どうやら、あのちょび髭が、俺たちの世界から転移してきたモンゴル帝国のアタカイって奴だな。


「グアームド軍が矢で攻撃してくるぞ!全員、防御態勢に入れ!ラーダル率いる光魔法使いたちは、例の魔法を頼む!」


 俺は、すぐにジュテーム軍に盾を構えさせ、防御態勢に入らせる。


「了解です!それまで耐えて下さい!」


 ラーダル率いる光魔法使いたちが一斉に詠唱を始める。


 アタカイは勝ち誇った笑いを見せて、攻撃指示を出す。


「あそこまで啖呵を切っておいて、取る作戦がそれとは、片腹痛いわ!我がモンゴル帝国が、ジパングなどに負けたのも何かの間違い!それを証明してやる!」


 グアームドの軽騎兵たちが一斉にこちらへ矢を放つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る