幕間

「とある少女の手記」

 『祭りの前の日!』


 ――明日は待ちに待ったミズヴァルのお祭り。この日ために色々な準備をしてきたし、お面の仕上げもバッチリだわ。初日は仕事をしないといけないけど、運が良かったら案内する人とあちこち回れるし、十分たのしめるよね。みんなはお留守番だけど、たぶん文句いうんだろうなあ……。シスターたちが何とかなだめてくれるといいけど。



『初日!』


 今日は良い日だったわ! 初めて来た人だったからあちこち案内できたし、何より年が近い人で話もしやすかったしね。それにしても面白い人たちだったなあ。冒険者さんってみんなあんな感じなのかしら? すごい楽しかったけど、残りの人達に自慢の場所を紹介できなかったのが心残りかなあ、明日は何とかしてみんなを連れて回らないと! でも個性強い人達だったし、大丈夫かしら。ううん、頑張るのよわたし。ミズヴァルにはいい所がまだ沢山あるんだから!



『二日目』


 裏路地の方に抱き合って、首元に顔をうずめているカップルがいたけど、あ、あれってそういうことよね。いくら四年に一度のお祭りだからって、浮かれすぎるのもいけないわ。うん。ハレンチよ。大体ちゃんと家があるんだから、そこですればいいのに……って違う違う、そういうことじゃなくて。

 祭りの間はどうしても皆浮かれちゃうし、衛兵さんとか番兵さんも気が緩んじゃうから風紀が乱れがちなのは問題よね……。あの子達が見ちゃったら何て言い訳すればいいのよ。それにしてもちょっと浮かれ過ぎじゃないかしら。抱き付いている人けっこう見たわよ。それに酔ってふらふらしてる人も集まってたし。衛兵さんが仕事しなさすぎなのも問題ね、まったく。


 ……それにしてもみんなどうしたのかな。待ってたのに来なかったし。宿もなぜか閉まってたし。あの二人に引っ張られて仕方なく先に行っちゃったのかな? ……いっしょに回れないのは残念だけど、仕方ないよね。冒険者って自由な人達が多いし。祭りを目一杯楽しんでくれることが一番大事なことだしね。

 


『最後の日!』

 

 一日が始まる前に日記を書いちゃってるけど、こういうのもありだよね。今日は最後まで祭りに参加する予定だし、夜は疲れて日記を書くよゆうなんてないだろうし。昨日はあの子達をおさえるのが大変だったけど、今日はもっと大変なんだろうなあ。シスター達と協力して何とかしないと。外はもう騒がしいなあ、最後の日だもんね、わたしも限界まで楽しまないと。

 ……出来れば、クロノス達ともう一度会えないかな。このままお別れはちょっと寂しいし。

   

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